研究課題/領域番号 |
22K04315
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
中田 幸男 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (90274183)
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研究分担者 |
森口 周二 東北大学, 災害科学国際研究所, 准教授 (20447527)
梶山 慎太郎 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (50803532)
田上 聖人 山口大学, その他部局等, 特別研究員(PD) (40986113)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 個別要素法 / 解析の信頼性 / ベンチマーク |
研究実績の概要 |
ラウンドロビン解析(一斉解析)は、近年、数値解析に関わる科学・工学系の様々な分野で活発に行われている。地盤工学分野においても、国内外で活動があり公表されている。この対象は、より広く普及された連続体解析の一つである有限要素法である。一方で、不連続体解析に対するラウンドロビン解析の実施事例についてはなく、地盤力学及び地盤工学課題に対するベンチマークは存在していない状況にある。ベンチマークがないことで、解析結果の確からしさが議論できないことや、解析コードの検証、モデル化の妥当性について検討できないなど、シミュレーション結果の信頼性を担保するための手法がない。最近、不連続体解析の中でも個別要素法(粒状要素法)は、多種多様に利用され、かなりの普及が進んできている。一方で、解析を用いるユーザーが各自の能力の中で、コードの検証や解析の妥当性について、検討するにとどまっていて、信頼性のおける解析であることを保証する手立てがないのが現状である。解析の検証を可能にするには、前述のようにランドロビン解析を実施することで、解析対象として題材がベンチマークを開発することが最も有効であると考えられる。 本申請では、地盤工学における不連続体解析の代表である個別要素法解析の検証を可能にするために、地盤力学に関連する課題について、ラウンドロビン解析を実施し、ベンチマークの開発につながることとした。ここで、対象とする地盤力学の基本問題は安息角挙動であり、これは、粒状体により形成される山の斜面の傾きが安息角と呼ばれるところによる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地盤工学における不連続体解析の代表である個別要素法(DEM)解析の検証を可能にするために、地盤力学に関連する課題について、ラウンドロビン解析を実施した。2022年度では、得られた成果の取りまとめに加え、成果の公表について検討した。ここでの地盤力学の基本問題は、試験方法が比較的容易に実施でき、様々な農学、理学、工学の分野に関係する安息角測定時の挙動を対象とした。 2022年度に得られた成果は、実験で得らた安息角測定結果を秘匿した状態で、解析者に再現解析を行ってもらうラウンドロビン解析を実施した。国内外の16のグループによって行われた結果は、適切な解析パラメータを用い、適切な粒子形状をモデル化した再現解析をすることで、実験結果と解析結果が一致するという結果を得た。 2023年度では、この実験結果と解析結果の一致に関連して、さらに深く検討することとして検討を行った。つまり、個別要素法解析の入力パラメータのうち、結果への寄与の大きいパラメータを選んで、その感度分析を行い、その結果の整理を行った。 また、基本的な地盤工学課題として、斜面の流動問題をテーマとすることとし、そのテーマに対する実験の方法と課題について整理した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、2023年度に実施した成果について公表するとともに、2回目の地盤工学に関連する基本問題に対する国際ラウンドロビン解析の準備を行う。 2023年度で得らた成果は、地盤力学の基本問題の解析に与える感度解析の成果である。ここでは、複数の機関で、複数のDEMコードを用いて、解析結果に与えるパラメータの感度分析を行ってきた。この検討について、さらに議論して追加の分析をするとともに、これらの成果を公表する。公表については、2024年度の国際集会(IS-Grenoble)での、特別セッションで公表する予定である。 2回目の国際ラウンドロビン解析は、地盤工学の基本問題として、土砂災害に大きく関連する土砂流動に取り組む方向で準備をすすめる。この流動問題の本実験を行う。2回目のこの国際RR解析では、実験の実施も複数の機関で行えるよう計画している。複数の機関での実験結果の差についても、分析するとともに、解析結果と比較が可能となるよう準備を進める。複数の機関での実施についても、国内外の大学との連携して実施するよう計画している。また、2024年度の国際集会の中で、国際RR解析のへの参加者も募るよう準備する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
地盤工学の基本問題として選定した、流動実験については、海外の大学での実験実施を計画している。当初、2023年度に海外への大学での実験を実施する予定であった。しかし、予備実験の実施において、実験方法や得られる値の取得方法について、詳細に検討する必要が生じたため、2024年度の実施に変更した。
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