研究課題/領域番号 |
22K04329
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
豊田 政史 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (60324232)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 貧酸素水塊 |
研究実績の概要 |
本研究では,詳細な現地観測と大気・湖水の流動数値モデルを用いて,湖内の貧酸素水塊分布と湖周辺の時空間的に非一様な気象条件を考慮した上で,貧酸素水塊の出現機構を解明することを目的としている.この機構が明らかになれば,国内外の湖における貧酸素問題解決の一助になり,水質問題解決に向けた効率的な観測体制の提案にもつながる可能性があると考えている. 当初は研究対象としている諏訪湖での現地観測を予定していたが,長野県が令和2年度夏季に行った現地での連続観測結果を入手することができたため,この現地観測結果を分析した. これまで単発的にしか得られていなかった風の特性を定量的に明らかにできた.具体的には,以下の結果が得られた.1)湖水流動に大きな影響を及ぼすと思われる強風時の卓越風向(南東,西北西)およびその時間帯が明確になった.2)空間的な風の非一様性に関しては,南東の強風時は湖面全体に一様風が吹くのに対し,西北西の強風時は湖北東部で弱くなる非一様風である.また,これらの強風時の風速の大きさに関しても具体的な数字を得られた. 貧酸素状態発生に関しては,水深3.0m以浅では夜の初めから朝にかけて多くみられるのに対し,水深4.0m以深では時間帯に関係なくみられるという時間的特性が明らかになった. 上記の風に関する現地観測結果の分析に並行して,突発的な貧酸素水塊の出現に影響を及ぼす可能性がある内部ケルビン波に関する検討を上記の現地観測結果および数値実験により行った.その結果,諏訪湖では内部ケルビン波が起きている可能性が高いことが確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
連続観測データに基づいて風の非一様性および貧酸素状態発生の時間的特性について数値的に明らかにし,内部ケルビン波に関する数値実験を行うことができたため.
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度の諏訪湖での現地観測結果をより詳細に検討するとともに,その後に行った諏訪湖での現地観測結果を整理する.現地観測から明らかになったメカニズムを検証するために数値実験を行い,最終的には湖周辺の時空間的に非一様な気象条件と湖内の貧酸素水塊出現機構との関連性を明らかにすることをめざす.
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次年度使用額が生じた理由 |
(次年度使用額が生じた理由) 長野県が行った過去の現地観測の詳細なデータが手に入り,現地観測機器購入が当初予定を下回ったため. (使用計画) 主に研究発表に利用する予定である.
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