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2022 年度 実施状況報告書

気候・人間活動の変化に伴う流域圏窒素循環の長期変動の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K04337
研究機関九州大学

研究代表者

丸谷 靖幸  九州大学, 工学研究院, 助教 (50790531)

研究分担者 永井 信  国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(地球表層システム研究センター), 主任研究員 (70452167)
駒井 克昭  北見工業大学, 工学部, 教授 (90314731)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード流域圏環境 / 気候変動 / 人間活動 / 物質循環 / サケ・マス
研究実績の概要

流域圏環境は数年,数10年といった長期的な諸要因(気候や人間活動の変化など)の影響の蓄積により形成されるため,現在の流域圏環境が必ずしも健全(最適)とは限らない.つまり,対象流域にとって健全な環境の理解・予測には,過去-現在-将来に亘る検討が重要となる.しかし,既往の多くの研究は,陸域と海域間の循環,さらにその変遷や何が健全な環境であるかなどの検討が行われていない.
また,近年では気候変動だけではなく,人間活動の変化(例えば土地利用土地被覆変化)や生態系(例えば遡河魚)の利用方法の変化に伴い,流域圏の窒素循環が変化している.窒素は,生態系の必須栄養素である一方で,水質汚濁の原因物質,かつ温室効果ガスの1つである一酸化二窒素の源でもあるため,窒素循環機構の長期的な変化傾向の理解・予測が重要であるものの,検討が不十分である.そのため本研究では,流域圏窒素循環の長期的変化予測・解明に取り組む.
初年度である本年度は,気候変動・人間活動の変化(例えば土地利用土地被覆変化)や生態系(例えば遡河魚)の利用方法の変化が流域圏環境に与える影響を評価するため,本研究の主な研究対象流域としている知床周辺を対象に,人間活動の変化として,土地利用土地被覆の長期変化GISデータを基に調査した.また,気候変動の影響を評価するため,北海道全域の気象官署の降水量・気温のデータを集め,気候変動の影響の顕在化時期を推定した.さらに,過去から現在にかけてのオープンデータとして公開されているサケ・マスの捕獲データを集め,サケ・マスによる海域から陸域への栄養(窒素)還元量の推定に資する検討を行った.これらの情報を統合化することで,過去から現在にかけての長期的な流域圏環境の評価が出来る可能性が示唆された.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では,過去-現在-将来において健全な流域圏環境を評価することを目的としている.その中,過去から現在にかけて実際に生じている流域圏環境の把握に重要となる,気候変化(降水量・気温の長期変化),人間活動の変化(土地利用土地被覆の変化),それらの影響を受ける生態系の変化(サケ・マスの漁獲量の長期変化)をオープンデータとして公開されているデータを集め検討を行い,これらを統合化することで過去から現在の流域圏環境の変化を評価できる可能性が示唆された.そのため,本研究の目的を達成するにあたり,概ね順調に研究が進んでいると考えている.

今後の研究の推進方策

本年度実施した,気候変化(降水量・気温の長期変化),人間活動の変化(土地利用土地被覆の変化),それらの影響を受ける生態系の変化(サケ・マスの漁獲量の長期変化),のそれぞれの検討結果を統合化することで,流域圏環境の長期的変化を再現する.なお,統合化するにあたっては,流域の水・物質流出量を推定する必要があるため,これまで検討を進めてきた分布型水・物質流出モデルの改良にも取り組むこととする.また予測精度の不確実性の検討も実施するため,1つの数値モデルではなく,異なる数値モデル(例えば陸域水循環モデルと河道モデルを統合した数値モデル)を開発するなどにも取り組む.それにより,1つの流域だけではなく複数の流域においても流域圏環境を評価可能な汎用性の高い数値モデルの開発にも取り組む.
また,現在-将来に亘る流域圏環境の変化の予測も実施することを本研究の目的としているため,気候変動に関しては例えばd4PDFなどの大規模アンサンブルデータの活用,人間活動に関しては,人口動態や土地利用土地被覆の将来予測データなどを活用し,将来予測にも取り組む.

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルス感染症対策として,打ち合わせをオンラインで実施したこと,現地調査等の回数を減らしオンラインで入手可能なデータにより研究を進めたため,当初予定していた予算額全額を使わずに研究を遂行することが出来たため,次年度使用額が生じた.次年度は新型コロナウイルス感染症による制限もほぼ解除されたため,現地調査の再開ならびに得られた研究成果の公開として論文投稿料への支出や研究に必要になる数値データやGISデータ等の購入,文献情報等入手のための資料複写費等に予算を使用し,研究を発展させていくことを考えている.

  • 研究成果

    (19件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 2件)

  • [国際共同研究] North-Eastern Federal University(ロシア連邦)

    • 国名
      ロシア連邦
    • 外国機関名
      North-Eastern Federal University
  • [国際共同研究] The University of Western Australia(オーストラリア)

    • 国名
      オーストラリア
    • 外国機関名
      The University of Western Australia
  • [雑誌論文] Using Inverse Modelling and Dual Isotopes (δ15N and δ18O of NO3) to Determine Sources of Nitrogen Export from a Complex Land Use Catchment2022

    • 著者名/発表者名
      Sri Adiyanti, Yasuyuki Maruya, Bradley D. Eyre, Perrine Mangion, Jeffrey V. Turner, Mathew R. Hipsey
    • 雑誌名

      Water Resources Research

      巻: 58 ページ: -

    • DOI

      10.1029/2022WR031944

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] 公開資料から読み解く流域の人々と水の関わり-長良川流域における出水や漁獲高の記録を事例として2022

    • 著者名/発表者名
      永井信,斎藤琢,丸谷靖幸,藤岡悠一郎,渡部哲史
    • 雑誌名

      流域圏学会誌

      巻: - ページ: -

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 跡見花蹊日記を用いた明治・大正期における東京のサクラの開花季節記録のマイニング2022

    • 著者名/発表者名
      永井信,小谷亜由美,丸谷靖幸
    • 雑誌名

      日生気誌

      巻: 59 ページ: 89-99

    • DOI

      10.11227/seikisho.59.89

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 流出モデルと気候モデルの不確実性を考慮した気候変動が河川流況に与える影響評価2022

    • 著者名/発表者名
      丸谷靖幸,宮本昇平,安藤胤帆,伊島美咲,渡部哲史,矢野真一郎
    • 雑誌名

      土木学会論文集B1(水工学)

      巻: 78 ページ: I_121-I_126

    • DOI

      10.2208/jscejhe.78.2_I_121

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 観測データの乏しい流域での利用に向けた再解析データを用いた水文気象準観測データ作成手法の開発2022

    • 著者名/発表者名
      和田光将,丸谷靖幸*,渡部哲史,矢野真一郎
    • 雑誌名

      土木学会論文集B1(水工学)

      巻: 78 ページ: I_115-I_120

    • DOI

      10.2208/jscejhe.78.2_I_115

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Can Yandex statistics and google trends be used to detect people’s interests in berries in the Russian Far East?2022

    • 著者名/発表者名
      NAGAI Shin, Ayumi KOTANI, Yasuyuki MARUYA, Tuyara GAVRILYEVA
    • 雑誌名

      Polar Science

      巻: 33 ページ: -

    • DOI

      10.1016/j.polar.2022.100871

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] Pollution source analysis of the Kushiro river basin using rare earth elements2023

    • 著者名/発表者名
      Syiraz B. M. Ali Jaafar
    • 学会等名
      The 37th International Symposium on the Okhotsk Sea & Polar Oceans
    • 国際学会
  • [学会発表] 人口減少・気候変化が河川・ため池の土砂堆積に及ぼす影響 -愛媛県西条市丹原町を対象とした分析-2022

    • 著者名/発表者名
      渡部哲史
    • 学会等名
      水文・水資源学会/日本水文科学会2022年度研究発表会
  • [学会発表] JRA-55降水量を用いた流域圏スケールにおける水文気象観測データ作成手法の検討2022

    • 著者名/発表者名
      丸谷靖幸
    • 学会等名
      水文・水資源学会/日本水文科学会2022年度研究発表会
  • [学会発表] 流水型ダムの緊急放流へ移行する確率に与える気候変動影響評価-立野ダムを事例として-2022

    • 著者名/発表者名
      安藤胤帆
    • 学会等名
      令和4年度土木学会全国大会第77回年次学術講演会
  • [学会発表] 異常洪水時防災操作の発生確率に与える気候変動影響評価とダム再開発事業の適応策としての効果に関する検討-鶴田ダムを例にして-2022

    • 著者名/発表者名
      伊島実咲
    • 学会等名
      令和4年度土木学会全国大会第77回年次学術講演会
  • [学会発表] 再解析データを用いた水文気象準観測データ作成手法の検討2022

    • 著者名/発表者名
      和田光将
    • 学会等名
      令和4年度土木学会全国大会第77回年次学術講演会
  • [学会発表] 衛星データを用いたため池における水草の有無の推定手法の開発に向けた基礎的検討2022

    • 著者名/発表者名
      小澤泰樹
    • 学会等名
      令和4年度土木学会西部支部研究発表会
  • [学会発表] 日本全国および九州地方の各流域における長期的な気候変化に関する分析2022

    • 著者名/発表者名
      下村謙太
    • 学会等名
      令和4年度土木学会西部支部研究発表会
  • [学会発表] 流出モデルと気候モデルの不確実性を考慮した気候変動が河川流況に与える影響評価2022

    • 著者名/発表者名
      丸谷靖幸
    • 学会等名
      第67回水工学講演会
  • [学会発表] 観測データの乏しい流域での利用に向けた再解析データを用いた水文気象準観測データ作成手法の開発2022

    • 著者名/発表者名
      和田光将
    • 学会等名
      第67回水工学講演会
  • [学会発表] Chemical profiling and identification of river waters at the east of Shiretoko Peninsula using heavy elements2022

    • 著者名/発表者名
      Tatsuki Igusa
    • 学会等名
      WET2022-online
    • 国際学会

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公開日: 2023-12-25  

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