研究課題/領域番号 |
22K04349
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
濱岡 秀勝 秋田大学, 理工学研究科, 教授 (70262269)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 交通安全 / 交通取締り |
研究実績の概要 |
警察による通取締りは交通事故抑制の効果があり、事故の当事者のみではなく他の運転者に安全運転の意識を働きかける効果があるため、安全な交通環境の向上につながる。しかし、全ての交通事故が取締りによる交通事故抑制に効果が期待されるとは限らない。そのため、どのような事故が取締りによって減らせる事故かを明らかにし、効率的な取締りを見つける必要がある。本研究では、取締りによって減らせる事故と減らせない事故の特徴を明確に分類し、そして取締りによって減らせる事故を対象に、交通事故の削減に高い確実性のある取締り方法を検討することを目的としている。 まず、警察の方々との打合せを重ね、取締りにより削減できる事故を明らかにする方法を確立した。その際、事故原因において、事故が発生した原因が運転者の技術問題であれば、取締り効果が低いと考えている。一方、安全運転に集中できないことが原因のときは、間接的な取締り効果を期待でき、取締りによる減らせる事故と判断した。事故類型からみると、追突事故は減らせない事故に分類される傾向があり、出合頭事故は減らせる事故が多くなった。 そして、取締りにより削減できる事故の対象に、その特徴を明確にした。時間帯別に見ると、7~9時と16~18時の合計6時間で事故全体の5割が発生していた。秋田市内で発生した事故の半数は交差点内事故であり、その中でも住宅地域内の事故が全体の5割であった。事故類型からみると、右折・直進の事故は幹線道路の交差点、歩行者事故は中心部にて発生することを確認できた。 この成果を踏まえ、今後は削減できる事故に対する取り締まり方法を明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
発生した事故の中で、交通取締りにより削減できる事故と、交通取締りを行っても削減できない事故へ分類することが、本研究において最も重要な事項である。2年目の研究において、警察の方々の意見を踏まえながら、方法を確立できたことは非常に価値あるものと考えている。 3年目は本研究の最終年度でもあるため、この成果をもとに、望ましい取締方法を確立することを考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年度として、以下の2件を分析する ①交通取締りの波及効果の分析:地理情報システム上に反映した交通取締りの地点、および交通事故の発生地点をもとに、相互の関係を把握する。その際、ある地点での交通取締りが、以降に発生する交通事故に対して、とれくらいの空間距離であるか、どれくらいの時間経過があるか等、時空間軸にて整理する。 ある地点にて実施した交通取締りは、空間的な拡がりとともに、その効果が減衰するものである。また、これは、時間経過についても同様である。ここでは、この減衰特性を定式化する。その際、空間的な拡がりについては、実施した取締りの内容や対象地点の交通量、波及する際の道路特性等による変化を考慮する。本研究では、こうした多次元の要素を総合し、減衰効果を定式化する。 ②望ましい交通取締り方法の確立:ドライバーの危険行動に対する交通取締りには、特定の場所にて危険行動を確認する定点型と、パトロール中に危険行動を確認する移動型の2種類がある。また、交通取締りを行うことなく、単にパトロールするだけでも、ドライバーに対して安全運転行動への働きかけができる。このように、交通取締りがドライバーへ及ぼす影響は多岐にわたるが、これまでの研究成果をもとに、望ましい交通取締り方法を確立する。具体的には、各道路の危険状況分布のもと、交通取締りによって交通事故削減がもたらす社会的費用の減少を示し、一方で人的投入による導入コストの増加も考えた定式化にもとづき、その最適化により望ましい交通取締り方法を示す。
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次年度使用額が生じた理由 |
若干の繰越金が発生しているが、当該年度の交付額と比べると大きな割合ではない。そのため、繰越金額をゼロにしようと無理に使うことは考えなかった。
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