研究課題/領域番号 |
22K04363
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
上村 靖司 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (70224673)
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研究分担者 |
杉原 幸信 長岡技術科学大学, 工学研究科, 助教 (00824335)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 路面融雪 / 降雪検知制御 / 残雪深制御 / 資源消費 / レーザー距離計 / LiDAR / 路面残雪シミュレーション / 表面下散乱 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,日本の豪雪地帯に広く普及する消融雪システムの資源消費量(燃料,電気,地下水など)を半減させる制御技術を開発することである.既往研究で現在主流の降雪検知制御を積雪検知制御に替えることで運転時間が半減することが示唆されているため,10㎝以下の路面に残った雪(路面残雪)の深さをレーザー距離計により精度よく計測して消融雪システムの運転制御に活かすものである. 初年度に路面残雪にレーザー光を照射した場合の「表面下散乱」現象について,新積雪,圧雪,みずべた雪,氷板などの多様な雪質に対して,実験とシミュレーションにより,散乱係数,吸収係数,屈折率など雪質に応じたパラメータ値が同定できたことから,今年度にこれらの成果を学術論文として取りまとめた. 次に,気象データに基づく時間単位の残雪深シミュレーションを,新潟県内の新潟・柏崎・長岡・安塚・十日町の5地点に展開し,定義済みの最大残雪深(信頼性)・総資源消費量(コスト)・重みづけ総残雪時間(サービス)の3指標に基づいて最適条件を探索した.その結果,降雪検知制御を残雪深制御に替えることで,全地点ですべての評価指標が改善された.また融雪装置の熱出力は,現行の1.5~2倍として短時間で融雪を完了させることで3指標すべてが向上すること,可変熱出力は固定熱出力に対して優位性がないことを,を示した.以上の成果は2件の口頭発表として公表した. さらに,「点」計測であるレーザー距離計による残雪深測定の知見を踏まえて,今年度は「面」計測できるLiDARを導入し,融雪に伴う解けムラの面的把握に取り組んだ.その結果レーザー反射強度から解けムラの分布は比較的精度よく把握できたが,残雪深の測定精度はレーザー距離計より劣っていた.さらに,空間中の降雨・降雪粒子をLiDARで検知できたことから,リアルタイムの降雪強度把握が可能であることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
消融雪システムの資源消費量(燃料,電気,地下水など)を半減させる高度な制御技術を開発するために, 3つの制御方式についてのシミュレーションを新潟県内の代表地点5箇所で実施し,定義済の3つの指標(資源消費量,最大残雪深,サービスレベル)で評価し,どの地点でも資源消費量を大幅に削減できる運転条件を見出し,この成果について2件の学会発表を行った.また初年度に実施したレーザー距離計による高精度残雪深計測について,計測の障害となる積雪層の「表面下散乱」現象について,実験とシミュレーションにより新雪,みずべた雪などの雪質に応じた散乱係数,吸収係数,屈折率の物性値が同定でき,かつ制御システムを実装するための残雪深推定手法の提案に至り,これらを学術論文として取りまとめた.以上を総合して「概ね順調に推移している」という判断をした.
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今後の研究の推進方策 |
消融雪システムの3つの制御方式についてのシミュレーションを新潟県内の代表地点5箇所で実施し,定義済の3つの指標(資源消費量,最大残雪深,サービスレベル)で評価し,どの地点でも資源消費量を大幅に削減しつつ,同時に集中的な豪雪への対応力も高められる運転条件を見出したことから,これらの成果を,学術論文としてとりまとめる.また,融雪路面の解けムラ把握を目的に導入したLiDARを使い,残雪深分布の把握に継続して取り組むとともに,今年度の実験で反射強度のRGBデータから路面上に残る雪質の推定の可能性が示唆されたことから,路面状況判別にも取り組んでいく.研究最終年度に当たることから,研究成果の取りまとめとともに,企業等との連携によって研究成果を社会実装するべく実用技術の開発にも取り組んでいく.
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