研究課題/領域番号 |
22K04368
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
轟 朝幸 日本大学, 理工学部, 教授 (60262036)
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研究分担者 |
兵頭 知 日本大学, 理工学部, 助教 (90778341)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 災害時交通 / 空港アクセス |
研究実績の概要 |
令和元年度に関東を襲った台風15号により,成田国際空港がアクセス機能を喪失して陸の孤島化したことは大きな社会的問題となった.この問題の所在を明らかにして,基幹空港を災害時においても機能維持するための将来への備えは極めて重要である.そこで本研究では,成田空港を対象として災害時における空港周辺のアクセス交通の機能障害の実態を明らかにする.それを踏まえ,輸送計画シミュレーション手法を開発し,それを用いて鉄道等の復旧過程を前提として適切な代替交通を提供できる輸送計画のあり方について検討する. 具体的には,基幹空港において(成田国際空港を主な対象として),大規模災害時の旅客滞留の緩和および関係者輸送を確実かつ効果的に運用するために,①令和元年台風15号による成田空港関連の交通被害の実態調査,②空港アクセスの災害時交通マネジメントのための交通資源の検討,③空港アクセスの輸送プライオリティの検討,④災害時の輸送計画シミュレーションの開発,⑤災害時の輸送計画に関する提言を行う. 本年度は,以上のうち「①令和元年台風15号による成田空港関連の交通被害の実態調査」を中心に進めてきた.具体的には,モバイル空間統計データを用いて,成田空港と首都圏各地の間の所要時間の変化を分析した.さらに,スマートフォンのGPSから得られる「ポイント型流動人口データ」を用いて,成田空港と東京都や千葉市などへの移動経路を道路や鉄道の復旧過程と照らし合わせて分析した.その結果,アクセス鉄道および東関東自動車道が不通となっていた時間帯は,一般道の通行にも支障があったため通常の7倍から8倍の時間を要し,圏央道の復旧後は2倍弱程度まで短縮したことがわかった. また,次年度へ向けて,輸送計画シミュレーションの構築に向けた検討なども進めてきた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は,①令和元年台風15号による成田空港関連の交通被害の実態調査を中心に進めてきており,モバイル空間統計データやポイント型流動人口データを用いて,成田空港と首都圏各地の間の所要時間の変化および移動経路を道路や鉄道の復旧過程と照らし合わせて分析してきた.一方,コロナ禍の影響もあり,交通事業者などへのヒアリング調査が思うように進められなかった.これらは,次年度の早い段階で実施すべく準備を進めている. また,④災害時の輸送計画シミュレーションの開発にむけて,シミュレーションの枠組や導入する手法について検討を進め,次年度への基礎となる知見を得ている.
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今後の研究の推進方策 |
今年度の移動実態調査をより詳細とするため,台風襲来後の車両移動データ(ETC2.0データ)を用いることを検討している.これにより,路線および区間別に通行実態を把握できる.特に,緊急輸送道路指定されている路線の実態を把握し,輸送のためのバスなどの運用に利用できるかを検討する. また,今年度に十分に実施できなかった空港会社やエアラインなどの交通事業者等へのヒアリング調査を実施し,災害時の従業員の通勤ニーズおよび帰宅困難な旅客の需要量を明らかにする. さらに,これらの基礎データを入力とした災害時の輸送シミュレーションの構築を試みる.このシミュレーションにより,災害時に空港アクセスが途絶した場合でも,従業員などが参集でき,また旅客の空港アクセスを可能な限り確保するための方策を検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍が続き,打合せなどをオンラインで実施し,ヒアリング調査を控えたために旅費や謝礼金などの支出がなく余剰となった.次年度において,ヒアリング調査などの交通費等に使用する予定である.
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