研究課題/領域番号 |
22K04378
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
高部 祐剛 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (70625798)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | リン / 下水 / 電解晶析法 |
研究実績の概要 |
炭酸カルシウムが主成分であるシジミの貝殻(破砕したもの)を下水に添加・浮遊させ、陽極で発生する水素イオンで貝殻を溶解させることで、下水へのカルシウムイオンの供給とそれに伴うリン析出性の向上を可能とする手法の開発に取り組んだ。下水試料として、余剰汚泥を対象とした浮上濃縮装置での濃縮分離液を用いた。濃縮分離液には汚泥残渣が含まれており、汚泥残渣を含む濃縮分離液に貝殻を添加し電気分解を実施すると、電気的引力により貝殻と汚泥残渣が吸着し、貝殻と汚泥残渣の混合物が電気分解過程で発生する酸素・水素ガスにより水面に浮上した。その結果として、貝殻の陽極近傍への移動、即ち陽極での貝殻の溶解が困難であることが分かった。一方で、酸素・水素ガスにより汚泥残渣を浮上濃縮・除去した上で、貝殻を濃縮分離液に添加することで、貝殻の陽極での溶解が可能となり、カルシウムイオンの供給によりリン析出率が向上した。また、貝殻の添加量の違いが、リン析出率に与える影響を調査した。以上の実験を通じて、貝殻を添加しない実験系に比して、濃縮分離液1 L当たりに0.174 gの貝殻(カルシウムとして0.06 g)を添加した実験系で、リン析出量が2.35倍に向上した。 貝殻添加により析出が促進されたリンの沈殿回収を見据えて、析出物の沈殿実験を実施した。電気分解後、実験装置を2時間静置することで、貝殻を添加した実験系でのリン析出物の85%が沈殿し、良好な沈殿性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
通常廃棄される貝殻のカルシウムイオン供給材としての利用を可能とする電解晶析法を回分式実験により構築した。また、リン析出物の沈殿による回収が可能であることを示した。以上の成果を踏まえ、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、令和4年度に回分式実験により構築した貝殻をカルシウムイオン供給材とした電解晶析法を、連続式実験に拡張させる。水理学的滞留時間を操作因子とした連続式実験により、リン析出率90%以上を達成することを目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文の英文校正費が当初予定額より安価であったため、若干の差額が生じた。差額は次年度に繰り越し、執行する。
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