下水処理場での余剰汚泥を対象に、電解晶析法を利用したリンの析出に関する連続実験を実施した。実験の際、陽極の周辺に粉砕したシジミの貝殻を高密度に存在させるよう工夫を施した。また、実験装置(有効容積:1 L)内の水理学的滞留時間は30分とした。通電電流値を0.5 Aとして実験を行った結果、陽極で発生する水素イオンにより貝殻が溶出し、カルシウムイオンが水中に供給されることで、リンが効率的に析出し、リン酸イオンの90%が除去された。また、析出したリンは、実験装置下部に設置した流出口で回収されることが明らかとなった。一方で、汚泥は、陽極・陰極それぞれから発生する酸素ガスおよび水素ガスにより実験装置内上部の水面へ浮上濃縮され、濃縮汚泥の蒸発残留物(30 g/L)は元の汚泥での値の5.5倍となった。このことから、粉砕したシジミの貝殻を高密度に存在させるよう工夫を施した電解晶析法により、リンの析出と汚泥濃縮(生物学的下水処理において必須の工程)を同時に達成可能であることを提案した。また、析出したリンと濃縮した汚泥が別々の空間に存在することから、析出したリンが理論的に回収可能であることを明らかとした。さらに、通電電流値を0.25 Aとして同様の実験を行った場合、汚泥の一部が実験装置の下部に沈降したこと、また、通電電流値を0.75 Aとした場合、リン酸イオンの除去が向上しなかったことを踏まえ、水理学的滞留時間30分の条件のもとリンの析出と汚泥濃縮を同時に達成するには、通電電流値を0.5 Aとすることが適切であることが示された。
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