研究課題/領域番号 |
22K04382
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研究機関 | 北海道科学大学 |
研究代表者 |
鈴木 昭弘 北海道科学大学, 工学部, 講師 (30826277)
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研究分担者 |
川上 敬 北海道科学大学, 工学部, 教授 (10234022)
山村 寛 中央大学, 理工学部, 教授 (40515334)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 浄水処理 / 深層学習 / フロック / 凝集 / 回帰予測 |
研究実績の概要 |
2022年度は小型凝集装置から凝集中のフロックの画像を取得し、これをデータセットとして凝集沈殿後の濁度の回帰予測を行う深層学習モデルの作成を行った。学習に用いる深層学習モデルとしてResNetをファインチューニングした回帰予測用のモデルを作成した。モデルには画像のみを入力とするモデルと、pH・濁度・温度などの化学的なパラメータも入力するモデルを用意した。 また、データセットの作成のために小型凝集装置から連続的にデータを取得し蓄積を行うことができる仕組みを作成した。今回の実験では比較的水質の変化が穏やかな2022年1月から2022年3月までのデータと、水質の変化が大きい2022年4月から2022年6月を対象とした。 実験の結果、(1)小型凝集装置から取得したフロックの画像と作成した学習モデルによって、凝集沈殿後の濁度を回帰予測可能であることがわかった、(2)フロックを撮影した画像の疎密を平均化するために画像合成が有効であることがわかった、(3)作成したモデルは学習に用いなかった未知の84%以上のデータについて、0.5度以下の誤差で予測可能であることがわかった、(4)同様に50%以上のデータが0.25度以下の誤差で予測可能であることがわかった、(5)画像のみを入力とするモデルと化学的なパラメータも含めたモデルでは、化学的なパラメータを用いたモデルのほうが3%から4%ほど高い精度で予測可能であることがわかった。 凝集剤の注入量の最適化を行うためには0.25度以下で90%以上のデータが予測可能であることが望ましく、現在はその精度に達することができないことが課題となっている。これは取得したデータセットが不十分である可能性が高いと考えている。一方で自律制御だけであれば0.5度の濁度誤差で予測できれば良いため、現時点での十分に適応可能な精度で予測できているといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は計画通り、凝集沈殿後の濁度を予測するための深層学習モデルを開発した。また、同様に画像調整手法としてフロックの疎密を低減させるために画像合成を行う事が適しているという知見を得た。水質パラメータを加えチューニングしたモデルの実験も行い、水質パラメータも学習データに加える方が精度が高まるとの知見を得た。また、2023年度で計画していた異なる季節での学習についても先行して実験を行った。 一方で、異なるアーキテクチャのモデルとの比較実験には至っていない。これについては次年度以降で実験を行う。以上のことからおおむね順調に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
未知のデータに対する精度をより向上させるために継続して小型凝集装置を用いてデータを取得し、これをデータセットとした実験を実施していく。また、精度向上のために他のモデルによる学習実験を実施していく。現在ではResNet-RSとEfficientNetについての実験を行う予定である。また、夏以降のデータについても学習を行い、季節ごとに適した学習モデルを作成していく。このとき例えば月ごとの水の特徴を学習させた弱学習器を複数作成し、アンサンブル学習を行うことも計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費を効率的に執行したことで予定よりも執行額が少なかったため。繰越額を利用してデータ格納用のファイルサーバを増強する予定である。
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