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2022 年度 実施状況報告書

蛍光分析で検出されるトリプトファン様物質ピークの由来はタンパク質かタンニンか

研究課題

研究課題/領域番号 22K04388
研究機関埼玉県環境科学国際センター

研究代表者

池田 和弘  埼玉県環境科学国際センター, 水環境担当, 主任研究員 (60422987)

研究分担者 日下部 武敏  京都大学, 工学研究科, 助教 (40462585)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード三次元励起蛍光スペクトル / トリプトファン様ピーク / タンパク質 / タンニン / 指標 / アミノ酸
研究実績の概要

三次元励起蛍光スペクトル法による水質評価が常法となりつつあり、河川等の水質評価に実務的に使用されつつある。検出されるトリプトファン様ピークはタンパク質の量の指標となると信じられており、藻類あるいは生活排水の河川への混入の指標として使用されている。一方、天然有機物であるタンニンが共存する場合、ピーク位置がトリプトファン様ピークと重なるため、指標性に疑義が生じる。本研究では、トリプトファン様ピークが真にタンパク質の指標となるか、河川水や下水を対象に検証し、特にタンニンの影響について解明する。指標となる場合の条件や環境を整理する。
初年度である令和4年度は、まず、河川水の蛍光分析を河川38地点で月1回実施し、トリプトファン様ピークの蛍光強度データを取得し、地域や月間変動特性を把握した。蛍光強度の平均値は0.28±0.33 RUであった。下水処理場の直下で水が滞留しやすい地点で最大値を確認した。この地点では蛍光強度は基本的にBODと連動していたが、BODと比較して異常に強度の高い月も確認された。同じくタンパク質の指標として使用されるチロシン様ピーク強度はBODとよく連動していることから、トリプトファン様ピークへのタンパク質以外の成分の寄与が強く疑われる例を確認できた。
次に溶存タンパク質濃度を、酸加水分解後に測定した15種類のアミノ酸濃度の和(DTAA)を算出することで評価した。下水流入水の調査を2回実施し、DTAAは、29μMおよび18μMであった。その試料のトリプトファンピークの蛍光強度は6.8 RUおよび4.6 RUであり、タンパク質濃度と連動していた。一方、河川水中のDTAA濃度は低く、定量には濃縮が必要であったが、その場合、還元剤を添加し脱気しても酸分解の過程でいくつかのアミノ酸が消失することが分かった。次年度は膜濃縮でタンパク質を選択的に濃縮して定量を実施する予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では、トリプトファン様ピークが真にタンパク質の指標となるか、河川水や下水を対象に検証し、特にタンニンの影響について解明する。具体的な研究内容は、「1.河川水、湖沼水、下水においてトリプトファン様ピークとタンパク質濃度に相関があるか検証する。2.トリプトファン様ピークに対するタンニンの影響の程度を解明する。3.影響の程度を河川水質等により整理し、指標となる条件や環境を把握する。」ことである。
これまでに河川水の蛍光分析を河川38地点で月1回実施し、トリプトファン様ピークの蛍光強度データを取得し、地域や月間変動特性を把握した。BODが比較的低く、チロシン様ピーク強度が小さいことからタンパク質濃度が比較的低いことが推察されるにも関わらず、トリプトファン様ピーク強度の高い事例が確認できた。また、その時の水質データを取得した。
さらに下水流入水の溶存タンパク質濃度を、酸加水分解後のアミノ酸濃度の和(DTAA)を算出することで評価し、現在までの調査では下水流入水においては、トリプトファン様ピークは溶存タンパク質濃度の指標となるという結果を得た。一方、河川水の溶存タンパク質濃度の測定には濃縮が必要であり、当初想定した方法での定量は困難であったが、スパイク試験等により回収率の低くなる工程を同定した。検討の結果、来年度は前処理を兼ねた膜濃縮を実施し、アミノ酸を定量することに決定した。
これまでのところ、河川のタンパク質濃度測定に課題はあるが、概ね研究計画に沿って順調に研究が進んでいる。トリプトファン様ピークが真にタンパク質の指標となるか検証するための、重要なデータを取得できた。

今後の研究の推進方策

2年目は下水と河川水の蛍光およびタンパク質分析を継続し、トリプトファン様ピーク強度とタンパク質濃度に相関があるか検証を続ける。河川水のタンパク質分析では、膜濃縮を実施し、妨害成分の影響を除外して定量を行う。また、タンニンの影響が強くでることが予想される雨天時河川調査を実施する。
さらに、トリプトファン様ピークに対するタンニンの寄与の程度を解明する。まずタンニンの指標として総ポリフェノール濃度を測定し、タンニン由来の蛍光の寄与を推算する。タンパク質濃度とトリプトファン様ピーク強度の相関性の低い試料でタンニン濃度が高いことを確認する。相関性の低い試料については、UF膜で分子量分画を実施し、タンニンの存在の確認分析を行う。

次年度使用額が生じた理由

多試料のアミノ酸分析を実施する予定で前処理装置(備品)の購入費を計上していた。しかし、河川水中のアミノ酸濃度が低く定量には濃縮が必要であり、その場合、当初考えていた手法では、前処理過程でいくつかのアミノ酸が消失し、正確な定量値を得ることが困難であることが分かった。定量方法の確立に時間がかかり、多試料測定用の備品および関連する消耗品の購入は見送ったため差額が発生し、次年度使用額が生じた。
次年度は膜濃縮でタンパク質を選択的に濃縮して定量を実施する予定である。試料を濃縮する必要があるため、関連する前処理装置を購入する。この購入費は当初予定しておらず、次年度使用額はこれらの購入に使用する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023 2022

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] 励起波長495nm蛍光波長515nm付近に検出される蛍光ピークの由来および水環境中での挙動2023

    • 著者名/発表者名
      池田和弘、竹峰秀祐
    • 学会等名
      第57回日本水環境学会年会
  • [学会発表] EEMs法で励起波長495nm蛍光波長515nm付近に検出される蛍光ピークに関する同定および下水調査2022

    • 著者名/発表者名
      池田和弘、竹峰秀祐
    • 学会等名
      第59回環境工学研究フォーラム

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公開日: 2023-12-25  

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