研究課題/領域番号 |
22K04395
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松尾 真太朗 九州大学, 人間環境学研究院, 准教授 (40583159)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | コンクリート充填鋼管構造 / プレキャスト / 高力ボルト / 柱継手 / グラウト |
研究実績の概要 |
本研究はCFT部材のプレキャスト化に取り組むものであり,建設現場での建方において不可避的に生じるPCaCFT部材同士の隙間が継手の構造性能やCFT骨組の挙動に及ぼす影響について構造実験により検証し,グラウト充填実験を通して本継手の設計上の留意点を提示することを目的とする.本年度は2022年度の検討で積み残したグラウト充填方法の検討を継続し,製作まで完了済の短柱圧縮試験体の載荷実験を実施し,その後,曲げせん断実験を計画した. グラウト充填実験:初年度検討時と比べて木製治具の形状と継手部鋼管角部への固定方法を改良した.木製治具はCNC加工機により各部品を製作し層状に重ねてグラウト材が流れやすいように工夫した.固定に関しては250mm角程度までの鋼管幅に制約されるが,市販のラチェットバンドを用いて十分固定できることを確認した.グラウト材も市販のもので軟練り条件で練ったもので十分に充填可能であることを検証した. 短柱圧縮実験:充填実験結果に基づき複数の試験体に同条件でグラウトを充填した後,短柱圧縮実験を行った.充填高さが20~35mm程度では継手圧縮挙動に差異はなくCFT断面と同等の剛性・耐力を示すことが確認された.この成果はAIJ九州支部研究報告にて公表済である. 曲げせん断実験:当初は実条件に近い軸力比0.3程度を想定し,せん断スパン比を2つ設定することとしたが,改めて検討し,限られた試験体数の中で可能な限り本継手に対して厳しい条件下でのデータを取得するために,軸力比0かつ小さめのせん断スパン比の条件下でグラウト充填有無による継手挙動の影響を検証するための2体の試験体,継手強度(ボルト強度)が曲げせん断挙動に与える影響検証のための試験体を計画した.初年度の進捗の影響もあり本実験は試験体製作(打設)までを完了しており,今後5月下旬から6月初旬にかけて実験し曲げせん断挙動を明らかにする.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画の通り,曲げせん断実験を計画し,試験体製作等を完了し,ほぼ予算を使った状態にあるが,初年度からの継続検討課題であるグラウト充填施工法の検討および短柱圧縮実験の進捗も遅れていたため,それらの実験データの分析にも時間を要した.そのため,本実験を2023年度内に実施するには至っていないのが現状である.
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今後の研究の推進方策 |
【現在までの進捗状況】で述べた通り,2年目に予定していた曲げせん断実験については,本報告書作成時点で鋼管へのコンクリート打設まで完了しており,現在養生中である.2024年度は,まずは5月下旬から6月初旬にかけて曲げせん断実験を速やかに実施することが必要である.それを受けて,当初予定していた本構法による継手を有する1層1スパン骨組の繰返し水平載荷実験につなげることとする.骨組実験に関する計画は以下のとおりである. スパン2m,高さ1.5m程度のCFT門型骨組試験体を対象として,両柱頂部を介して繰返し水平力を与える実験を実施する.実験変数はグラウト充填の有無とし,継手位置は一般的な骨組のプロポーションに合うように設定する.両者の比較により,グラウト充填無しの構法の可能性の検討も含め,本継手構法の実現性について検討し,CFT骨組を設計する際の本構法に関する留意事項を整理する.ここで,グラウト充填無しの実験変数は,当初計画では設定していなかったものである.今後,部材のリユースなどにも配慮した構造設計が求められることが予想される中で,本継手においてグラウト充填が省略できる可能性について検証しておくことも,将来的に有用であると考えられたためである.なお,継手なしのCFT骨組との挙動比較も重要であると考えているが,これに関しては数値計算による骨組挙動の再現も可能と考えられ,必要に応じて実施することとする.
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次年度使用額が生じた理由 |
【現在までの進捗状況】でも述べた通り,曲げせん断実験の実施には至っておらず,今後グラウト充填費用,歪ゲージ等の計測物品費用,試験機利用料なども発生することが想定されるため,一部の予算を繰り越しておくこととした.
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