研究課題/領域番号 |
22K04411
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山口 謙太郎 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (10274490)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 歴史的組積造 / 参考試験体 / 破壊形式 / 振動台加振実験 / 有限要素法解析 / 静的載荷実験 |
研究実績の概要 |
本研究は、歴史的な組積造建築物(九州大学旧本部庁舎 等)を事例として、研究課題の核心をなす3つの学術的「問い」を解明することと、本研究で新たに提案する参考試験体の作製方法の開発を目的として行っている。令和4年度は、交付申請書の研究実施計画に示した研究項目(A)~(D)のうち、以下に示す内容の検討を行い、研究成果を得た。 (A) 提案する参考試験体の構成要素の開発と実験(B), (C)に用いる試験体の試作・検討:参考試験体の構成要素となるモルタルブロックの作製方法や強度の調整方法を検討し、同じく強度を調整した目地用の接着剤を用いて参考試験体を試作し、その施工精度や製作上の留意点を確認した。検討の結果、目地材については圧縮強度のみでなく、流動性や可塑性が調整でき、かつ引張強度を組積造の目地材と同等に調整できる必要性が確認された。 (B) 作製した参考試験体の静的載荷実験(構成要素と試験体の力学特性比較):作製した参考試験体(組積体)の圧縮試験を行い、構成要素の力学特性が参考試験体の力学特性に及ぼす影響に関する知見を得た。 (C) 3つの学術的「問い」を解明するために作製した参考試験体の振動台加振実験:問い[1]無補強の組積造建築物において、壁体の曲げ破壊やせん断破壊が先行する条件は何か を解明するために行う振動台加振実験について、参考試験体の形状、モルタルブロックおよび目地材の諸元、加振方法などを検討し、試験体脚部および頂部に必要な治具の設計を行った。 (D) 実験(C)を再現する有限要素法解析と実験および解析結果の比較:振動台加振実験の再現に先立ち、静的載荷実験の再現を行うために、組積造に適する解析方法を検討した。具体的には、ネパールの歴史的組積造を構成する組積体の曲げ実験の結果について、マクロモデリングを拡張する方法で再現する検討を行い、拡張すべき諸元について複数の知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究で利用する九州大学建築構造実験棟の振動台について、令和3年度まで一部行われていた新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための行動制限の後、それまで実施できなかった実験研究を行う利用者と利用時期の調整を行う必要が生じたため、本研究の振動台実験は令和5年度に行うこととし、実験計画や治具の設計を先行して行った。また、有限要素法解析による静的載荷実験の再現を検討項目に加え、これを初年度に行うことで、組積造の場合に検討が必要な有限要素法解析の方法に関する有用な知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
検討中の参考試験体について、作製時や載荷時の問題点は初年度に概ね洗い出すことができたため、令和5年度は当初の研究計画に加えて、静的載荷実験の種類を増やすとともに、振動台加振実験を行い、並行して両実験の解析検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究で利用する九州大学建築構造実験棟の振動台について、令和3年度まで一部行われていた新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための行動制限の後、それまで実施できなかった実験研究を行う利用者と利用時期の調整を行う必要が生じたため、本研究の振動台実験は令和5年度に行うこととし、実験計画や治具の設計を先行して行った。このため、令和5年度は当初の研究計画に加えて、静的載荷実験の種類を増やすとともに、振動台加振実験を行い、並行して両実験の解析検討を進める。
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