主として今年度は荒壁土の強度発現に際して、藁スサの量と圧縮強度特性の関係について実験的に考察を行った。 現在建築基準法施行令第46条に関しての規定である、いわゆる壁倍率の評価において建設省告示第1100号で1.0から1.5の数値が充てられている。この告示の中で荒壁土の仕様として百リットルの粘性のある砂質粘土に対する藁スサの量を0.4キログラム以上0.6キログラム以下混合するもの(告示規定)とされているが、あわせて同等以上の強度を有するものとも示されている。この藁スサの量を増やすと強度的な変化がどうなるかを調べた。水あわせの時期はある程度の気温と湿度が必要なので、京都の5月から8月の温湿度を想定した場合の比較を行った。水合わせ期間が1ヶ月の場合、8月の条件からでは告示想定の2倍の藁スサを入れた場合の圧縮特性が同等か、やや大きな値を示した。それに対して5月の水合わせに対しては圧縮強度が15%減、圧縮剛性が10%減、7月の場合は強度、剛性ともに5%程度小さくなる傾向を示した。これらのことから温度湿度の高くなる夏場にかけての環境下では藁スサの量を増やしても告示規定に対して同等の強度を有するものとして判断できそうであるが、やや気温の低い時期では必ずしも同等とは言えない可能性が示唆される結果となった。一方で、気温が低い時期に水合わせを開始したとしても、適切な水合わせ期間を設定することで告示規定と同等な強度が発現する可能性も示唆される結果となった。
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