研究課題/領域番号 |
22K04420
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
山川 誠 東京理科大学, 工学部建築学科, 教授 (50378816)
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研究分担者 |
永野 康行 兵庫県立大学, 減災復興政策研究科, 教授 (00410374)
朝川 剛 東京電機大学, 未来科学部, 准教授 (00806127)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 建築構造 / 耐震設計 / ロバスト性 / レジリエンス / 構造最適化 / 制振装置 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
建物性能、地震動特性、復旧シナリオの不確定性について耐震ロバスト性と耐震レジリエンスを評価し、構造計画上の意思決定に有用な学術的基盤の提供と数値実験システムの実現に必要な研究を行った。得られた研究実績の概要は以下の通りである。 1)構造性能、地震動特性に不確定性が含まれる場合の耐震ロバスト性指標の信頼区間を順序統計量から予測するために、順序パラメータ、予測精度、必要標本数の関係について理論的検討を行った。また、構造システムの減衰効果と心棒効果に着目し、パラメータ変動に対する応答低減率の定量的検討から耐震ロバスト性の高い構造形式について分析を行った。 2)半導体製造工場を対象に地震動レベルと期待損失、復旧期間の関係を調べ、耐震レジリエンスを定量的に扱うための理論的検討を行った。検討結果に基づき、期待損失、期待復旧期間の積分値から耐震レジリエンスを表す指標値を算出した。 3)鋼構造骨組の鋼材量最小設計に機械学習を適用することによる解探索性能の向上を検討した。検討を通じて、強化学習が有効であるとの結果を得られた。 4)初期剛性付与型変位制御型ブレースおよび地震時のエネルギー吸収要素となる履歴型ダンパー(座屈拘束ブレース)と粘性型ダンパー(オイルダンパー)の組み合わせについて検討を行った。 5)入力された地震を模擬した揺れの加速度、速度、変位の最大値やその他条件より人の不安度の傾向を知り、また、フロアレベルの応答に対する人体頭部の応答を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
建物性能、地震動特性、復旧シナリオの不確定性について耐震ロバスト性と耐震レジリエンスを評価し、構造計画上の意思決定に有用な学術的基盤の提供と数値実験システムの実現に必要な研究を行っている。現在までの進捗状況は以下の通りである。 1)鋼構造骨組を対象に、設計パラメータ、地震動特性に不確定性が含まれる場合の建物応答の非超過確率値を順序統計量から予測し、ロバスト最適設計に応用する方法を開発した。開発した数値実験システムから構造システムの特徴分析を行っている。 2)耐震レジリエンス評価例として、半導体製造工場を対象に工場内設備である製造装置のフラジリティを整理し、そこから地震動レベルに応じた全体の期待損失、期待復旧期間を算出し、これらの積分値である耐震レジリエンスを表す指標値の分析と構造形式の関係を検討している。 3)鋼構造骨組の鋼材量最小設計への機械学習の適用において,強化学習による解探索性能の向上を分析している。 4)変位制御型ブレースの終局静的載荷試験の結果に基づき、初期剛性付与型変位制御型ブレースの検証を行っている。 5)地震動を受ける建物内にいる人が、安全安心でいられるための条件について整理を行っている。また、実験結果の波形分析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
建物性能、地震動特性、復旧シナリオの不確定性について耐震ロバスト性と耐震レジリエンスを評価し、構造計画上の意思決定に有用な学術的基盤の提供と数値実験システムの実現に必要な研究を行う。今後の研究の推進方策は以下の通りである。 1)鋼構造骨組を対象に構造システムの減衰効果と心棒効果に着目し、開発中の数値実験システムを用いて耐震ロバスト性の向上に有効な因子と改善された指標値との関係分析を行う。 2)耐震レジリエンスの定量的評価例として、半導体製造工場を対象に地震ハザードを考慮したいくつかのシナリオ地震に対する耐震レジリエンスに関する指標値を算出し、構造物の免震化等による指標値の改善量を分析する。 3)スパン数、スパン長、階数等を設計パラメータとするモデル建物を設定し、扱うデータセットの大規模化を行う。開発中の強化学習に基づく鋼材量最小設計法に対しデータセットの大規模化が学習性能に与える影響を調べる。 4)履歴型ダンパー(座屈拘束ブレース)と粘性型ダンパー(オイルダンパー)を組み合わせることで、耐震レジリエンス/ロバスト性向上を目的とした最適設計も含めた数値解析を実施し、費用対効果に優れた構造システムを具体に提示することを試みる。その後、初期剛性付与型変位制御型ブレースとの組み合わせも模索する。 5)構造設計者がどのように耐震レジリエンス/ロバスト性向上を目指しつつ、人の安心感を満足させられるか、研究遂行予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は数値解析用にPC-WSの購入を計画していたが、今年度は理論的検討を先行して行ったため、PC-WS購入と大規模な数値解析の実施を次年度に変更する。計画全体への影響は生じない見込みである。
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