研究課題/領域番号 |
22K04432
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
安藤 真太朗 北九州市立大学, 国際環境工学部, 准教授 (60610607)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | コミュニティ / 住まい / 身体活動 / ウォーキング / 経済分析 / 健康寿命 / well-being |
研究実績の概要 |
本研究では、健康寿命延伸や要介護要因の予防に寄与する近隣環境要素を明確化することで、SDGs達成に資するまちづくり指針を見出すことを目的とする。本年度においては、一市区町村を対象に町丁目レベルの近隣環境として、遊歩道や公園内施設に関するインフラ情報を中心として、道幅・三叉路の数やバス停の充実度等に関する道路交通情報や、NPO団体の活動情報に関するデータ化し、要因検証の足掛かりとした。特に、一小学校区をモデル地域として詳細に検証を進め、マルチレベル分析によって日常の運動習慣に対して遊歩道の近接性が寄与していることを確認した。これらはコロナ禍以降に関連が強固となっていることが伺え、健康寿命延伸と住環境が密接となっているとも考えられる。この結果を受け、継続的に調査を行っている遊歩道において通行量調査を強化し、ヒアリング調査も行い、今後の足掛かりとした。 上記の検証の一方で、マクロで得られる統計情報を活用した市区町村単位での関連検証を展開し、西日本地域を対象とした検証の結果、高断熱住宅(複層ガラス)普及と循環器疾患や呼吸器系疾患による死亡との関連を傾向スコア分析も交えて示した。また、住宅内における転倒の状況についても多変量解析によって明らかとした。特に、循環器疾患は、転倒に伴う大腿骨骨折と同様に、要介護につながりやすい疾病であるため、健康寿命を捉える過程において普及している住宅も一体的に評価していくことも必要と考えられる。そこで高断熱住宅の普及の効果を医療費や暖房費、労働損失費用を加味して、シナリオ分析を行うなどして自治体が取り組んだことによる効果を推定している。現時点で捉えた対象疾病は限られるが、その疾病予防効果のみでも50年で個人費用の回収が見込める可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アクティブな環境創造に資するまちづくりのための確認要件を示したチェックリストの構築に向けて、本年度は地理統計資料の収集し、その町丁目・学校区レベルの情報をGIS上にデータ化することに重きをおいた。これらによって、現地調査によって統計資料では明らかにできない、公園施設の充実度や花壇や街路樹、傾斜、三叉路の数等の近隣環境要素のデータ化を実現した。これらによって、一部地域でのモデル検証を展開することができた。また、別軸でトライアルした自治体単位での統計情報と死亡率の関連検証が軌道にのり、健康寿命や要介護と直結する疾病との関連も示されたことから、住環境をミクロとマクロで捉える検証とその体制も整いつつある。また、医療経済の観点からのアプローチも検討し、作成するチェック指標の意義を行政の観点からの“見える化”を目指すこととした。研究業績としては学会発表の2報に留まるものの、次年度発表予定の成果が多く集積し、更なる成果を生み出すデータ構築が進んでいることから、“おおむね順調に進展している”とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進は、初年度のデータ分析の領域(地域・対象疾病)を拡大すると共に、初年度にデータ整理までで止まっている検証内容を随時実施していくこととする。特に、ミクロの街区とした検証では、健康寿命もしくは国保データベースに基づく疾病単位での検証に発展させていくこととする。初年度の検証で関連が認められた遊歩道での調査については、通行量調査やヒアリング調査を拡大させて、ウォーキングに対するバリア解消に向けた検証も進めていく。また、マクロの市区町村単位での検証では対象地域を全国へ拡張し、対象疾病も拡げていく予定である。これらによって医療経済分析に発展させることも一案である。 尚、当初予定していた対象地域内での活動量調査についてはコロナ禍の影響もあり規模を縮小した。それに伴い、新規で医療用体成分分析装置を購入することは取りやめ、所有する旧型機器で対応することとした。
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