研究課題
少子高齢化が本格化する中、コンパクト・プラス・ネットワークの考えに基づき、都市構造の再編を推進するために、立地適正化計画制度が創設された。2021年7月現在、全国398自治体は計画を作成・公表している。その中で多くの自治体は、病院を都市機能誘導施設として指定している。また、国土交通省「健康・医療・福祉のまちづくり」ガイドラインでは、地域包括ケアシステムの構築とまちづくりとの連携等により、地域全体で市民生活を支えることができる都市構造への転換が求めれている。このような背景を踏まえて、本研究は少子高齢化社会における地域医療サービスの格差を是正するために、地域医療の需給バランスを明らかにし、医療効率の観点から医療施設の立地と移転の傾向を把握した上で、地域医療資源の再配分を念頭に医療施設の配置計画及び医療政策の転換に有用な知見を提示することを目的とする。近年、医療資源の効率的な配分を目的として、一か所に複数の診療所や歯科診療所、薬局が集まって開業している医療モールは増え続けていることを踏まえて、医療モールは一か所で複数の専門的な治療を受けることができ、また診療所間での連携がしやすいことから患者さんにとってのメリットが大きく、地域医療の核としての役割が期待されている。一方、比較的規模の大きい医療モールの開発及び出店は周辺地域への影響も大きい。そこで、本年度は医療モールに着目し、近年の出店傾向及び、出店による周辺地域への影響を明らかにするとともに、医療効率の観点から一般的な診療所と比較しながら、地域医療の核としての医療モールの役割を明らかにしている。
2: おおむね順調に進展している
これまでのデータの蓄積、そして予備調査などの事前準備は整えているため、研究計画は順調に進展することに繋がった。
今後、研究計画調書に示している以下、2つサブテーマを中心に研究を推進する。I.病院の立地及び移転などに伴う医療サービスの地域格差の明確化市街地の再編における都市機能誘導施設としての総合病院の郊外移転により、医療サービスにおける地域格差が生じると指摘されている。今後、高齢化のさらなる進展に伴う医療需要の増大は見込まれており、地域における医療サービスをいかに維持することに着目し、病院の立地及び移転などに伴う医療サービスの地域格差を明らかにするII.病院の移転による医療サービスの提供実態の解明改正中活法以後の病院の立地傾向、そして立地適正化計画の実施に伴う病院の移転は医療サービスの提供に与える影響、さらに病院などの医療資源の分布と中心市街地の再編の関係性を明らかにする。
主に研究に必要なデータ整備は前年度に実施したため、「次年度使用額」が生じたが、翌年度分として請求し、主に研究成果の発表と調査旅費に使用する予定である。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件)
Land, MDPI
巻: Special Issue ページ: 1-22
10.3390/land11050640
International Review for Spatial Planning and Sustainable Development
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都市・建築学研究、九州大学大学院人間環境学研究院紀要
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