研究課題/領域番号 |
22K04476
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
角田 誠 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 教授 (10180035)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | セルフリノベーション / 居住者参加 / 生産組織 / 専門工事業 / 設計者 / 職能 / 役割分担 / 責任体制 |
研究実績の概要 |
●セルフリノベの作業内容とその難易度の把握 居住者自ら行った改修作業の内容を部分別、部位別に詳細に把握し、施工を実現するために必要となる技量や技能を明らかにした。部屋の模様替えに代表される内装部分のリノベーションが最も多いが、塗装では水廻り部分や高所作業が発生する部分などでは自らの施工技量では困難な状況もあるという意見が聞かれた。一方で、専門の技術者にサポートを求めたり、ホームセンターで情報収集するといった積極的に技能保管する居住者も見られた。特に比較的大型の住宅部品を使用する改善(例えば建具や畳、フローリングブロック)では製造者による様々な支援方法が有用と考えており、地域に密着した技能者によるワークショップなども効果的に機能することを確認した。 一方で、施工の完成度(見栄えや使い勝手)と居住者参加度(満足度)との相対関係を見ると、施工の出来映えは居住者の満足度に繋がっていることは予想通りであったが、出来映えが今ひとつでも工事の達成感から満足度が上昇する例もあり、リノベーションならではの「割り切り」があることが明らかとなった。さらに今後の専門技術者(専門工事業)の参画についても、支援策の広がりが大きく影響すると考えられる。 ●セルフリノベにおける工程や費用、コスト管理方法の把握 セルフリノベ部分を管理する方法について、専門工事業者の調達方法について建具店を代表例に整理した。現状のリノベーションでは自ら積極的に工事を行っておらず、新築と同様に工務店からの依頼が多かった。一方で、希少建具の製作を特徴にしたり、解体からの古い建具の利活用をアピールするなどの、リノベユーザーの嗜好を取り入れた営業活動も見られた。それら多数がSNSを用いて展開していることを踏まえると、「もの」の流通と「こと(作業)」の実施とを結びつける仕組みが、セルフビルド実現の1つの対策としてに有用と考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
セルフビルドの作業内容については多様であり、かつ居住者の技術力にも幅があることは事前の予想通りであったが、本年度の調査結果よりデフォルトのリノベ作業モデルパターンが構築できたので、計画通りに進んでいると判断できる。 また、専門工事業の調達方法についても、「もの」と「こと」の棲み分けを念頭に置き研究を遂行することの有用性が確認できたため、作業工程やコスト管理にも応用可能と判断して作業の進捗をとらえている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は研究計画に示した内容で進める予定である。大幅な計画変更は行わず、事業者の対象数を増やすこと(業種の種類を増やす、新たな業種も加える等)で実態をより精度良く捉えることを想定している。 また住まい手参加の動機付けについては、資材購入の内容及び頻度も加えて、そもそものセルフリノベに参画した動機を類型化し、セルフリノベに参加することへの、技術面・精神面でのハードルを改善するための方策を明らかにするとともに、住まい手を支援する複数の支援策を構築するための検討を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
事業者への聞き取り調査の対象数を大幅に増加したので、調査旅費、謝金を増額する。また、セルフリノベ参画者についても対象を増やすため、必要となる経費を計上する。さらに、それに伴い物品費も増額する。
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