研究課題/領域番号 |
22K04492
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
三森 弘 名古屋大学, 施設・環境計画推進室, 講師 (50714515)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 無接道敷地 / 土地利用 / 京都市明細図 / 権利形態 |
研究実績の概要 |
土地利用の変化:昭和26年時と平成22年時の用途の構成を比較すると、ともに住宅用途が多くを占めるが、昭和26年時には商店、工場が、平成22年時にはガレージ・MSが多くを占めるように変貌していた。また、昭和26年時と平成22年時で用途間の変化が見られなかった路地空間は先の住宅・商店でのみ見られており、全体の56.9%で用途の固定化を招いていた。 「無接道敷地ではなくなった」元路地空間は、昭和26年から平成22年までと、平成22年から令和6年までの期間の単年度当たりの消滅率を見ると、近年は2倍近いペースで消滅していることが明らかとなった。 景観の変化の要因の一つと考えられる用途の変化に注目し、「無接道敷地ではなくなった」元路地空間を見ると、景観上変化の大きい用途と思われるホテル、マンション、アパートや、景観の断絶に寄与している駐車場、空き地の割合が上がっており、影響力が増していることが確認できた。これは貴重な路地景観を残している無接道敷地の消滅を許すことが、地域全体のもつ景観をも変化させてしまうことにつながることを示している。この要因には、社会的構造の変化に伴う需要の変化とともに、接道要件の課題などを背景とした無接道敷地の資産価値の低さゆえに開発圧力にさらされやすいことなどの影響が考えられる。 権利形態:土地の権利形態から路地部分とそれに接続する無接道敷地との関係をみると、路地・無接道敷地ともに特定個人(地主)の所有である「一筆型」、無接道敷地は住民による戸別所有だが路地は共有持ち分である「共有型」の割合が高かった。これは「一筆型」の場合、地主の意向により所有権移転が容易(路地空間が消滅し易い)に思える一方で、「共有型」の路地は共有持ち分であることから所有権移転には全員の同意が必要なことから所有権移転が困難(路地空間が消滅し難い)という相反する2つの方向性が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2024年度に行う課題であった「無接道敷地の再生案の提示・検証」の一部を2023年度に先行して行った結果、当初2023年度に行う予定としていた一部調査が遅れることとなった。「無接道敷地の再生案の提示・検証」の一部を先行して行った理由としては、今年度予定している「ランドバンク先進事例の調査」「合法化事例の調査」における視察先の事業体へのヒアリングの際に、無接道敷地の再生案について意見を伺う機会があるのではないかとの判断からである。 2023年度は、無接道敷地における「路地空間」の発生から消滅に至るまでの実態と要因の解明を、権利関係(所有ほか)・利用状況(用途・敷地形状の変更)及び接道条件の変化について調査・分析を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は昨年度の積み残し部分である内容について、7月をめどに、これまでの調査を踏まえ、 [①低未利用地化②空き家・空地化③所有者不明土地化]に至る要因が接道状況に起因するものかを統計的に検証する。 また、今年度は当初から予定していた「京都の歴史的街区における合法化事例の調査」「ランドバンク先進事例の調査」について着手する。具体的には、①権利関係(土地・建物/賃貸or所有)調査 /家族構成の変化②保存・活用の困難事例における要因分析③事業を成立させるアイディア、事業の仕組み、技術・法制度の面での現状と課題、について検討するが、その際には昨年度行った権利関係調査などと比較し考察していく。 その際、無接道敷地の保存・活用事例や失敗事例を予定していたが、“失敗事例”については判断が困難なため、代わりに「無接道敷地が消滅した事例」「新たに無接道敷地となった事例」に置き換え、その背景を探ることとする。 またランドバンク先進事例の調査では、無接道敷地が抱える課題解決のためのヒントをヒアリング予定であったが、昨年度先行して行った今年度の課題である「無接道敷地の再生案」を材料に、社会実装の可能性について、当該地域の現状を踏まえてヒアリングすることで、当初の目論見を達成したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額の発生については、積み残した調査の遅れと当初見込んでいた人件費を必要としなかったことで予算が執行されなかったことが原因と考えている。この件は高度な判断を必要とする分析のため、外注に頼れなかったことが原因である。専門業者を活用することで遅れを取り戻すとともに、それに見合った適正な予算執行を行いたいと考えている。 今年度は、「合法化事例の調査」「ランドバンク先進事例の調査」を計画しており、調査旅費とそれをまとめデータ化する人件費が増大することが考えられる。上記の反省をもとに、協力者・外注業者を含め厳密な予算管理を行うとともに、データの厳密性・再現性・公平性を担保することで、巷間よく見られる口頭発表レベルの成果ではなく、確実に査読論文へと昇華させる所存である。
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