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2023 年度 実施状況報告書

伝統的居住空間の共有性・継承性と連鎖網の動態-中国黄土高原の窰洞を対象に-

研究課題

研究課題/領域番号 22K04497
研究機関日本大学

研究代表者

栗原 伸治  日本大学, 生物資源科学部, 教授 (60318384)

研究分担者 八代 克彦  ものつくり大学, 技能工芸学部, 特別客員研究教授 (80242296)
斎尾 直子  東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (80282862)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード構成要素 / 微生物 / 植物 / 動物 / 人間 / 神 / もの / ワークショップ型フィールドワーク
研究実績の概要

本研究は、中国黄土高原の伝統的な穴居「窰洞」の居住空間を対象に、構成要素の共有性・継承性と連鎖網にかかわるデータベースを作成し、その動態について分析・表現していくことを目的にしている。そのために、2023年度は、1)2022年度の成果として得られた構成要素のリストとデータベースの作成方法をもとに、現地調査の実施内容を検討した。2)現地調査にて、1)の調査内容を確認・再検討しつつ実施し、データを収集した。3)現地調査で得られたデータの整理ととりまとめをおこなった。
具体的には、1)伝統的居住空間の構成要素の抽出とそのデータ化のルールづくりをおこなった。2)8月30日~9月7日、陝西省咸陽市三原県の地下タイプの下沈式窰洞の居住空間を中心に、さらに延安市宝塔区・延川県の地上式窰洞の居住空間も対象とした現地調査を実施した。その際、西安建築科技大学、西安交通大学等の学生 6 名とともに、いわば「ワークショップ型フィールドワーク」をとおして、窰洞の居住空間の実測、構成要素の抽出と現地の人びとへのインタヴュー調査などをおこなった。3)構成要素をめぐる呼称、場所(平面・断面レベル)、分類、つながりなどの一覧表を作成し、それをもとに共有性・継承性と連鎖網に関する分析・考察をした。
以上のように、2023年度はおもに中国黄土高原南部でみられる下沈式窰洞の居住空間に存在する構成要素の連鎖網について、ワークショップ型フィールドワークで得られたデータにもとづいて分析・考察した。結果、地上家屋との共通性および下沈式窰洞ならではの特異性について、これまでとは異なる表現によって捉えることができた。すなわち、居住空間の図面のうえに構成要素を描くという従来の捉え方ではなく、微生物、植物、動物、人間、神、ものなどの連鎖網のなかで居住空間を浮かび上がらせるという、従来とは逆からのアプローチによる捉え方ができた。

現在までの達成度
現在までの達成度

3: やや遅れている

理由

2022年度の研究実績の概要でも触れたとおり、2023年3月に予定していた中国黄土高原の窰洞集落における予備調査は、社会的な情勢により中止を余儀なくされた。そのため、当初、第1回目の本調査と位置づけていた2023年夏の現地調査が、予備調査兼第1回目の本調査という位置づけになった。この調査にむけて、1980年代を中心に黄土高原で調査を実施してきた窰洞考察団(団長:青木志郎東京工業大学名誉教授/日本大学元教授。本科研費の研究代表者・分担者・協力者も、この考察団のメンバーとして調査に参加していた)が蓄積した資料、および近年の黄土高原や窰洞をめぐる資料をもとに、十分な準備をすすめていたつもりであった。しかしながら、2023年夏に実際に黄土高原南部地域へ赴いてみると、下沈式窰洞集落の変化は想像をはるかに超えたものであった。
窰洞の居住空間、そしてそこに実際に住んでいる人びとの数が予想していた以上に激減していた。また、このことに呼応して、居住空間でみられる植物、動物の種類もかつてにくらべ大きく減少していた。さらに、微生物、植物、動物、神との共生に関しても、想定していたような状況はみられなくなっていた。このような現状を目の当たりにすることになったため、これらの構成要素に関するデータは十分には収集できなかった。
以上のような理由から、「やや遅れている」との判断に至った。なお、当初の研究計画では、2024年3月にも現地調査をおこなうことにしていた。しかしながら、植物が繁茂している状態で調査を実施したほうが本研究の目的に合致するため、植物があまり育っていない3月の調査は中止にすることとした。3月の植物の生育状況については、とくに今後の調査対象地とする寒冷地域の黄土高原北部においては顕著である、と考えれれることも中止の判断の後押しをした。

今後の研究の推進方策

上記のような「現在までの進捗状況」から、本来の研究目的も見据えて、今後は黄土高原北部の窰洞集落を対象に調査をすすめていく。なぜなら、黄土高原北部では、いまなお比較的多くの人びとが窰洞の居住空間に住まい、またその居住空間において植物、動物も比較的多くみられ、さらには微生物、植物、動物、人間、神等との共生も比較的多く確認できるとの期待がもてるからである。そのうえで、現地調査で得られたデータをもとに、窰洞という伝統的居住空間の共有性・継承性と連鎖網の動態について考察していく予定である。
このような予定にむけて、1)まずは、黄土高原北部の現状に関して、文献等をもちいた調査をおこなう。2)つぎに、その結果をもとに、黄土高原北部の具体的な調査対象地および調査内容について検討する。3)また、2)の検討結果にもとづいて現地調査を実施し、伝統的居住空間の構成要素の共有性・継承性と連鎖網に関するデータを収集する。4)そのうえで、現地調査で得られたデータを分析・考察する。5)この黄土高原北部の斜面に横穴を掘るタイプの靠崖式窰洞および地上に建てるタイプの地上式窰洞の居住空間に関する分析・考察と、2023年度に実施した黄土高原南部における地下タイプの下沈式窰洞の居住空間に対する分析・考察をふまえ、窰洞という生きられた伝統的居住空間の共有性・継承性と連鎖網について表現することを試みる。
以上のことから、伝統的居住空間の動態に対する新たな捉え方が可能になるものと期待できる。

次年度使用額が生じた理由

「現在までの進捗状況」で書いたとおり、2023年3月に予定していた中国黄土高原の窰洞集落における予備調査は、社会的な情勢により中止を余儀なくされた。また、2024年3月の現地調査も、既述したとおり、以下の理由により中止することとした:
2023年夏の現地調査の結果、今後は黄土高原北部地域を対象に調査をおこなうこととした。また、植物が繁茂している状態で調査を実施したほうが、本研究目的に合致していることが考えられる。そのため、とくに今後の調査対象地である黄土高原北部地域における3月の現地調査は、植物の生育状況により十分なデータ収集が難しいとの判断から中止にすることとした。
以上のことが原因となり、次年度使用額が生じている。しかしながら、2024年夏の当初から予定していた現地調査は、昨今の物価高や円安等の影響があるにもかかわらず、この次年度使用額があるからこそ実施が可能になるとも考えられる。この次年度使用額は、おもに研究代表者・分担者・協力者の現地調査の旅費として使用する計画がある。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2023 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 6件) 図書 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)

  • [国際共同研究] 中国農村発展学会郷村規劃専業委員会/西安交通大学/西安建築科技大学(中国)

    • 国名
      中国
    • 外国機関名
      中国農村発展学会郷村規劃専業委員会/西安交通大学/西安建築科技大学
  • [雑誌論文] 椎葉村の小集落で創造性を考える-座談会フィールド訪問の取り組みから-(おもに地域スピリットの共有・継承・連鎖に関する図の制作を担当)2023

    • 著者名/発表者名
      井上果子・中野美季・栗原伸治
    • 雑誌名

      農村計画学会誌

      巻: 42-3 ページ: 94-101

  • [学会発表] 中国実地考察下生活与環境構建的現実性2023

    • 著者名/発表者名
      栗原伸治
    • 学会等名
      ”郷村振興与文化遺産的保護利用”中日系列講座-建築与田野調査:過去・現在・未来
    • 招待講演
  • [学会発表] ”窰洞社会”和”黄土地”-通過空間的共同性伝承性下来的居住空間連鎖網-2023

    • 著者名/発表者名
      栗原伸治
    • 学会等名
      首届世紀跟踪研究視野下的郷村規劃与郷土建築学術研討会
    • 招待講演
  • [学会発表] ケンチクのしくみ 〇△□展2023

    • 著者名/発表者名
      八代克彦
    • 学会等名
      イコロの森
  • [学会発表] 基于窰洞研究開展的建造設計2023

    • 著者名/発表者名
      八代克彦
    • 学会等名
      ”郷村振興与文化遺産的保護利用”中日系列講座-建築与田野調査:過去・現在・未来
    • 招待講演
  • [学会発表] 窰洞研究的成果与進展2023

    • 著者名/発表者名
      八代克彦
    • 学会等名
      首届世紀跟踪研究視野下的郷村規劃与郷土建築学術研討会
    • 招待講演
  • [学会発表] 建築学領域的農村規劃及未来課題2023

    • 著者名/発表者名
      斎尾直子
    • 学会等名
      ”郷村振興与文化遺産的保護利用”中日系列講座-建築与郷村規劃:過去・現在・未来
    • 招待講演
  • [学会発表] 建築学領域的郷村規劃及其課題2023

    • 著者名/発表者名
      斎尾直子
    • 学会等名
      首届世紀跟踪研究視野下的郷村規劃与郷土建築学術研討会
    • 招待講演
  • [学会発表] Research on the spatial formation of Chinese villages in the process of Rural gentrification2023

    • 著者名/発表者名
      JIN Zhaoteng, 斎尾直子
    • 学会等名
      農村計画学会2023年度秋期大会,オーラルセッション4-1-3
  • [図書] キャサリン・スーシュ「気候が建築の材料とデザインに与える影響」/ グラハム・ロット「ヴァナキュラー建築に使われる土の地質学的分類」の翻訳、サンドラ・ピシク(編)、本間健太郎/前田昌弘(監訳) 『世界居住文化大図鑑 人と自然の共生の物語』2023

    • 著者名/発表者名
      キャサリン・スーシュ/ グラハム・ロット(著)、栗原伸治(訳)
    • 総ページ数
      496
    • 出版者
      柊風舎
    • ISBN
      978-4864981019
  • [学会・シンポジウム開催] 首届世紀跟踪研究視野下的郷村規劃与郷土建築学術研討会2023

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公開日: 2024-12-25  

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