研究課題/領域番号 |
22K04543
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研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
金丸 佳矢 国立研究開発法人情報通信研究機構, 電磁波研究所電磁波伝搬研究センター, 研究員 (80852285)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 衛星レーダー / 降水 / 風計測 |
研究実績の概要 |
降水レーダーによる宇宙からの風観測は実現されていない観測システムである。本研究の目的は、衛星搭載降水レーダーによるドップラー観測を模擬した数値計算手法を開発し、降水雲内の風観測の実現性を調査することである。2022年度は以下の研究を進めた。
(1)水平風観測模擬手法の確立:大量の雨をもたらす台風内部の動きを直接知ることが出来れば、現象論としての理解や気象災害予測の精度向上に資する情報の取得が期待できる。実際に観測するドップラー速度はレーダーの視線方向に対する相対速度である。宇宙から水平風を観測するには高速に移動する宇宙機に搭載されたレーダーが地球の自転と共に移動する降水雲に対して斜めに指向した状況を模擬すればよい。今年度は、これらを考慮した、宇宙からの降水レーダーによるドップラー観測を模擬する手法を構築した。
(2)レーダー観測方式の検討:ドップラー観測はレーダーとターゲットとの相対速度を測る。したがって、降水雲内の速度成分とレーダーを搭載する宇宙機の速度成分を適切に分離する必要がある。分離には降水雲の詳細な空間分布が必要となるが、その把握は容易ではない。本研究では、DPCA (Displaced Phase Center Antenna) 処理の方式を検討した。DPCA処理は、2つのアンテナを衛星進行方向に沿って適切に配置し、それぞれのアンテナによる受信信号を信号処理することで衛星進行方向とは逆向きにアンテナ移動速度を発生させ、宇宙機の速度を相殺させる手法である。この手法はもともと地表面観測に利用される合成開口レーダーの移動体検出技術を応用したものだが、降水に対象とした検討は不十分だった。そこで、地上に設置したマルチアンテナ雲レーダーにDPCA処理を適用させたところ、降水に対しても予想された結果(信号処理によってアンテナ移動速度を含んだ処理結果を再現すること)が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究提案時の計画に沿って研究はおおよそ進んでいる。水平風観測模擬手法の確立とレーダー観測方式についての研究が順調に進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
(1)と(2)はおおよそ目途がついたので、研究計画に沿って以下の研究を推進する。
(3)複数案の観測模擬計算:現実的な降水雲を入力としつつ、(1)と(2)を反映させた観測模擬の計算を行う。
(4)模擬計算結果の解析:水平風を得るには観測する視線速度から鉛直風および降水の落下速度の影響を除く必要がある。視線方向の速度は、衛星天頂角によって水平方向と鉛直方向の速度の寄与が変化する。降水粒子の落下速度や鉛直風を除去する誤差を加味しつつ、水平風観測に最適なアンテナの指向性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費はほぼ予定通りに予算執行できた。国内出張による旅費を計上していたが、所属機関の予算で対応できたため、その残額が次年度の予算繰り返しとなった。 今年度は海外出張による旅費を計上している。研究開始時に比べて物価高となっているため、繰り越し金を利用しつつ海外出張を行う。
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