研究課題/領域番号 |
22K04583
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
室町 幸雄 東京都立大学, 経営学研究科, 教授 (70514719)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 金融リスク管理 / 資産負債管理 / 金利リスク / 信用リスク / 局面転換 |
研究実績の概要 |
金利リスクと信用リスクの同時的な局面転換を考慮したときの債券価格評価,金利期間構造の理論を論文にまとめて海外学術雑誌に投稿したところ,モデルは興味深いが,観測可能なデータからのモデル・パラメータ推定が困難なので実務では役に立たないと指摘され,論文は却下された.そこで,観測データからのパラメータ推定について再検討し,適切な方法を考案した.さらに,その方法を実際の観測データで試したところ,もっともらしい推定値が得られた.そこで,その推定方法と推定結果も含めることにして論文を改訂し,ワーキングペーパーとして公表するとともに,海外学術雑誌に再投稿した. 一方,金利とクレジット・スプレッドの観測データの同時分析を大学院生とともに行い,明確な特徴を持つ複数のレジームを検出することができたので,その成果は学生の修士論文として公表したが,その分析をさらに進めた.前述の論文の改訂稿には,その推定結果が反映されている. また,金融機関の負債データ分析に必要なツールを元大学院生の実務家及び同僚と開発し,それを用いて住宅ローンのデフォルトとプリペイメントのデータを分析し,その結果をワーキングペーパーとして公表し,さらに共同研究者に国内の学会で発表してもらった.現在は投稿用論文を作成中である. 金融機関が行内に蓄積している負債データの分析に関しては,令和5年度開始の研究プロジェクトとするために,金融機関の方々と具体的な検討を進めている. 以上のように,令和4年度は,理論研究と実証分析が噛み合った形で進展しただけでなく,今後のデータ分析への体制整備に関しても着実に歩みを進めることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
金利とクレジット・スプレッドの同時分析で良好な結果が出たこと,そして,負債データ分析に必要な分析ツールの開発が進み,実証分析も行えたことは,想定範囲内ではあるが,研究の順調な進展を意味している.一方,最初の論文が観測データからパラメータ推定を行っていないことを理由に投稿先から不採択にされたことは残念であったが,その後,パラメータ推定方法を考案できて,しかも観測データを使って推定したところ悪くない結果が得られたことは,研究計画上非常に大きな進展であった.なぜならば,この研究で大きな課題となりうるのはパラメータ推定であろうと考えていたからである.現時点でこの課題が,まだ完全とは言えないが解決に向かって大きく進展したことは,想定以上の成果であった.
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今後の研究の推進方策 |
まず,投稿準備中の実証分析の論文と投稿済の理論の論文に関しては,学術雑誌への掲載を目指して適宜対応を進めていく予定である.また,金利とクレジット・スプレッドの同時分析に関しては,課題として残っているパラメータの推定誤差に関する議論の解決を目指す.解決した場合,修士論文を改訂して学術雑誌に投稿したい. 一方,金融機関の行内データの分析に関しては,今後も話を進め,令和5年度中の研究開始を目指す.データ分析は,これまでの成果である開発済の分析ツールのそれぞれと,それらを組み合わせたツール(今後作成予定)により進められると考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度は,まだコロナ渦の影響下にあることを懸念して,国際会議への参加はオンラインで対応できるものはオンラインで対応した.研究成果は年度中に出たが,あまり予算を必要としなかった.そこで,令和5年度以降に出てくるであろう成果とその発表,およびデータ分析向けの機器整備に備えるため,4年度に使用しなかった金額は5年度以降に使用することにした.
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