研究課題/領域番号 |
22K04607
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
谷水 義隆 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (60275279)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ショートフードサプライチェーン / 不均質性 / 不確実性 / 動的最適化 / スマート漁業 |
研究実績の概要 |
海に囲まれた国土を有する日本は,年間を通じて様々な魚介類を獲ることができる.しかし,魚価の低迷や地球温暖化の影響により,近海を漁場とする沿岸漁業は衰退してきた.沿岸漁業で獲れる魚介類は,種類や量の不均質性や不確実性が高く,生産性向上や効率化において,既存の数理最適化手法は適用できない.本研究は,沿岸漁業における地魚の不均質性と不確実性を考慮したショートフードサプライチェーン(short food supply chain:SFSC)の最適運用方策を提案し,計算機シミュレーションや実証実験により有効性を検証することを目標としている.2022年度は,マトリックス型遺伝的アルゴリズムを用いたオープン型宅配ロッカー(置き配ステーション)の最適配置に関する研究,および売れ行きを考慮したダイナミックプライシングに関する研究を行った.そこで,2023年度は,これらの手法の拡張を行った. まず,地図情報に基づき,オープン型宅配ロッカーの最適な配置を決定するマトリックス型遺伝的アルゴリズムを開発した.2023年度は,計算効率を向上するために,k-means法によるノードクラスタリングの手法を適用して,最適配置手法を拡張した.これにより,オープン型宅配ロッカーの配置場所の候補地を表すノード数を効果的に削減できるようになり,大規模な地域においても本手法が適用できることを計算機実験によって示した. また,ダイナミックプライシング手法として,遺伝的アルゴリズムとファジィ推論を用いて,販売予測と実績に生じたズレを追従することで,価値変化に見合った適切な価格をリアルタイムに算出する手法を提案した.2023年度は,顧客の価値の広がりを考慮することで,より適切な価格で販売することができるように提案手法を拡張した.これにより,販売者の利益が向上することを計算機シミュレーションにより検証した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年に取り組んだオープン型宅配ロッカー(置き配ステーション)の最適配置に関する研究をクラスタリングの手法を用いて拡張することで,大規模な地域の地図データを用いても,効率的にオープン型宅配ロッカーの最適な配置を決定することができることを確認した.これにより,人口が少ない地方だけでなく都市部の地図データを使っても,本手法を適用することができる.また,顧客の価値の広がりを考慮できるようにダイナミックプライシング手法を拡張することで,より多くの利益が獲得できることを計算機シミュレーションにより検証した.
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今後の研究の推進方策 |
まず,オープン型宅配ロッカー(置き配ステーション)の最適配置に関する研究では,人口密度や地形データに基づく豊富な地理情報を考慮できるようにモデルを拡張することで,より現実的な評価ができる手法を開発する.また,ダイナミックプライシングに関する研究では,顧客の価値について,より深い考察が加味できるようにモデルを拡張する.これにより,環境変化に対して恒常的に適正価格を決定する手法を構築する.また,現在着手している配送希望時間の変更に対する最適ルート再計算手法の研究や,サブスクリプション販売における組合せ最適化手法に関する研究において,シミュレーションシステムを開発することでこれらの有効性を検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
本科研費の研究課題では,複数の研究テーマを同時並行に行っている.これまでの研究では主にプロトタイプシステムの開発に従事してきた.これらの研究では計算機シミュレーションを行うことで膨大な実験結果が算出される.今後はより大規模な対象を用いて実験を行う予定である.そのため,その実験データの整理と分析のために,多くの人件費や謝金が必要になると考えている.また,海外の国際会議で研究発表を行う予定であるが,近年の過度な円安の影響で海外渡航費や宿泊費が高騰している.そこで,研究成果が増えてくる2023年度以降において,増加する必要経費のために,前年度からの繰越予算を費やしたいと考えている.
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