研究課題/領域番号 |
22K04608
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
松野 思迪 早稲田大学, 理工学術院, 講師(任期付) (90732214)
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研究分担者 |
枝川 義邦 早稲田大学, 理工学術院, 教授(任期付) (50303607)
大野 高裕 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70169027)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 意思決定支援 / 価値評価 / ダイナミック販売計画 / フードロス問題 / トレーサビリティ |
研究実績の概要 |
2022年度(初年度)は,本研究の対象とする農産物の生産・流通・販売プロセスのそれぞれの現状と実務上の課題点に関する情報収集を行い,そして,農産物の販売を中心に,以下3つのテーマの研究を進めてきた. 1.農産物販売におけるサステナビリティ情報の発信による販促効果への影響分析と検証:近年,国内消費者のSDGsに対する認識,理解,共感が急速に高まっている中,消費者は持続可能性が求められている農業・農産物全般に対してどのような情報を求めているか,そしてこれらの情報を消費者に伝えることで,購買活動を通じた農家支援や産地イメージの向上につなげることができるかを確認するための実証実験を行い,アンケート調査および脳波計測を用いた仮説検証を行った. 2.消費者の商品に対する価値評価を考慮したダイナミック販売計画の提案:農産物(桃)のEC販売を対象として,消費者の桃外観属性に対する評価に基づく期待価格およびECへのアクセス時間帯の違いによる消費者属性の違いを考慮し,販売側の収益が最大となるダイナミック販売計画作成の支援システムを構築し,現状の販売方法との比較により,提案システムの有効性を検証した. 3.規格外農産物(桃)の直販における消費者の期待価値を考慮した販売方法の設計:農協が設定した選果基準に満たされない規格外桃は大量に農家に返品されていることが現地調査で分かった.その結果,農業生産者の収益減少,そして廃棄処理によるフードロスの増加などの問題が発生している.消費者の桃に対する期待価値をWEBアンケート調査で把握し,消費者属性別の期待価値に対する分析を行った.消費者の期待価値,桃の在庫量と返品量,需要予測の分布などを考慮し,廃棄量最小を目的関数とする規格外桃パック詰の意思決定モデルを設計し,検証を行っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
消費者の商品価値に対する評価を考慮したダイナミック需要モデルを構築し,需要供給のバランスと在庫の適正化を考慮した販売計画を策定するとの初年度の研究目標を設定していた.それに対して,初年度では,消費者の農産物の生産・流通・販売における広義的な期待価値と狭義的な期待価値についての調査と分析を行い,状況の把握ができた.そして,消費者の桃の外観属性に対する評価に基づく期待価格という狭義的な期待価値に対する細分化を行い,その結果に基づいてダイナミック販売計画作成の支援システムを構築した.さらに,対象を規格外品に変更したが,適正在庫量,農協からの返品量,需要分布と顧客の期待価値を考慮したパック詰の意思決定モデルを設計した. 以上を踏まえ,設定していた初年度の研究目標に達成できていると考えている.また,多数の企業,農業生産者,卸業者などの協力を頂き,桃圃場,デコポン果樹園など複数農産物の生産地に対する現地調査を行い,複数の農業生産者に対するインタビューやスーパーの売り場での実証実験なども実施できた.農産物の販売のみならず,流通と生産に関する情報収集もできており,来年度および最終年度の研究作業の着手準備の一部ができていると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
消費者の農産物に対する期待価値およびそれに伴う需要分布を考慮し,不確実性の高い農業生産環境における収益性と作業負荷を考慮した生産計画の提案を行いながら,トレサビリティ仕組みの導入も含めた農産物サプライチェーン全体の可視化を目的とする情報収集・情報活用のプラットフォームの提案を行い,どのような情報(生産者,生産方法,入出荷先,ロットサイズ,輸送方式・ルート,在庫・輸送環境などの情報など)をどのように利用する(生産者の生産・出荷計画,卸業者の在庫管理,物流業者の輸送計画,小売の販売計画,レストランの調達計画など)とサプライチェーンのどこに対してどのような効果があるのかを明確に示すことが可能となるシミュレーションモデルを設計する. まずは生産者,物流,販売者で構成されるサプライチェーン構造を対象として,シミュレーションモデルのプロトタイプを作成し,有効性や実用性などに対する検証を行う.そして,複数の生産者,複数の販売者で構成されるサプライネットワーク構造を対象とするモデルを開発する.さらに企業と連携しながら,導入コストや作業者の認識などの導入障壁を検討し,情報収集・情報活用のプラットフォームの現場へのテスト導入を進めていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は極めて小さい金額(850円)であるため,ほぼ計画通りの利用ができていると考える.
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