研究課題/領域番号 |
22K04612
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
茂木 俊夫 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (50392668)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ガス爆発 / 影響度評価 / 爆風圧 |
研究実績の概要 |
可燃性ガスは、工場等の工業的な場面だけでなく、家庭用の燃料など様々な場面で使われている。一方、ガス爆発事故は国内外で多数報告されており、特に建物の破壊を伴うようなガス爆発事故は、その被害だけでなく社会的なインパクトが大きい。そのため、設備や構造物の破壊を伴うようなガス爆発の現象を理解し、現象の解明とそれに基づいた影響度評価手法の確立が必要である。しかし、これまでのガス爆発の影響度評価に関する研究は、可燃性ガスそのものが爆発したときの威力の評価や現象の解明の研究がほとんどである。そこで本研究では、「ガス爆発の事故現象に即した影響度評価手法の確立」を目指す。構造物等の破壊を伴うガス爆発で起こりうる現象を理解し、実際のガス爆発事故に即した影響度評価手法を確立することにより、可燃性ガスを扱う場での現実的なリスク評価に活用できるようにすることを目的とする。 今年度は、昨年度製作した小型の爆発容器を用いて破壊と爆風発生メカニズム詳細計測を行った。破壊に伴って発生する衝撃波の可視化には、Background Oriented Schlieren(BOS)法を用いた。その結果、容器内を伝ぱする爆発火炎と、破壊に伴って発生する衝撃波の可視化を行うことができた。それにより、容器破壊後に火炎面と衝撃波は触れ合わないことが確認できた。また、今回水素-空気混合気の爆発と高圧窒素による破裂を比較した結果、やはりガス爆発が発生した方が大きな爆風圧が発生することが確認できた。さらに、その原因として被破壊面近傍の圧力が測定した内圧を上回っていると仮説を立て、Baker が提唱するモデルを用いて逆算したところ測定した爆風圧を発生させるには6~25倍の破壊時の内圧が必要であるとわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度で、BOS法による衝撃波の可視化の可能性に目途を付けることができていたが、屋外での実験は天候に左右されたり、さらなる計測精度の向上が難しく、予定していた通りに進めることができなかった。また、材料費の高騰などにより、よりスケールアップした実験を計画することができず、模型実験で実験条件を増やすなどの対応を取らざるを得なかった。ただ、学会での発表を通じて、有用な意見等を得ることができたので、それらを反映させて研究の方向性を修正して進めて行きたい。
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今後の研究の推進方策 |
タスク1で設定した模型実験での計測精度の向上がなかなか図れず、またタスク2で設定していたスケールアップの実験が進めることができなかったため、模型実験における破壊面の材質を変えるなどして、様々な破壊挙動に関するデータの取得を目指す。それらのデータと、以前の予備的実験から得られているデータを組み合わせて、爆発影響度予測手法の確立に資する論理的展開を目指す。 次年度は研究計画の最後の年度となるため、スケールアップの実験の機会を探りつつ、これまで取得したデータを整理し、破壊を伴うガス爆発の影響度評価手法の提案を目標とする。
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