研究課題/領域番号 |
22K04617
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
渡邉 憲道 信州大学, 繊維学部, 特任准教授 (30356175)
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研究分担者 |
若月 薫 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (60408755)
上矢 恭子 公立諏訪東京理科大学, 工学部, 准教授 (10803356)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 焚火 / 火の粉 / 捕集 / 火傷 / 火災 / 通気度 / 空隙率 |
研究実績の概要 |
焚火の火の粉は、大きく分けて上昇気流に依存、上昇気流と風に依存、上昇気流と風に独立して飛散する特徴をもつ。これらの挙動に対して、落下後も大きな熱エネルギーを有する火の粉と人との接触は火傷を引き起こす。これまでに、これらの火の粉の発生及び飛散の機序に基づいた火傷防止の明確な対策は見出せていない。 本研究では、焚火上方に飛散した火の粉に起因した火傷の防止に着目し、焚火上方に配置したろ布に焚火による上昇気流を衝突させることによって、上昇気流を利用した火の粉の自律的な捕集に必要な技術・方法の確立を目的としている。具体的には、繊維製のろ布に衝突した上昇気流の性状及び火の粉の移動挙動、ろ布による捕集及びろ過の機序の検討を行う。 ろ布に衝突した上昇気流はろ布を通過する垂直方向及びろ布下面に沿った水平方向の流れに分岐し、火の粉はこれらの流れの中で移動すると考える。2022年度は、火の粉の自律的な捕集に必要な主因子と考えるろ布の通気性に着目し、ろ布の通気性とろ布に衝突した上昇気流の流動との関係を実験的及び数値解析的に調べた。また、ろ布の通気性に対する火の粉の捕集状況を実験的に調べた。火源は薪クリブとし、ろ布は火源上方のプリューム領域に設置した。 実規模実験から、通気性の高いろ布の場合、ろ布に衝突した上昇気流は中心付近で垂直方向にほとんど通過し、ろ布下面の水平方向の熱気流の流れの速度は低下することを明らかにした。他方、実規模実験から、通気性の高いろ布の場合、ろ布下面の火の粉は水平方向に移動し難くなったが、ろ布を通過する火の粉がの中心付近において見られた。この通過は、ろ布の空隙径を考慮することで防止できると考える。また、数値計算によって、ろ布に作用する三次元の流れ場を可視化することで、ろ布の通気性に対する垂直・水平方向の熱気流の速度は、実規模実験の結果と同様に通気性に依存することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度に予定していた4つの課題の1)火の粉の発生条件への薪の水分率及び発熱速度の影響に関する解析、2)焚火上方に配置するろ布の設置高さに関する解析、3)ろ布に衝突した上昇気流の性状に関する解析、4)捕集効率へのろ布繊維径・繊維間距離の影響に関する解析を計画とおりに進めている。当初想定していたとおり、ろ布による火の粉の自律的な捕集に有効であることが実験的及び数値解析的に明らかにできた。さらに、効果的な捕集のためのろ布の通気性に関する要求性能の目安を定量的に明らかにすることができたため、その進捗は概ね順調であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は計画書のとおり、ろ布に衝突した上昇気流の性状及び火の粉の飛散挙動、ろ布による捕集及びろ過の機序を実験的及び数値解析的に検討を行う。具体的には、2022年度に実施した1)ろ布に衝突した上昇気流の性状に関する解析、2)捕集効率へのろ布繊維径・繊維間距離の影響に関する解析を継続して行うとともに、2023年度は3)効果的な捕集におけるろ布の圧力損失に関する解析を行い、効果的な捕集のためのろ布の通気性に関する要求性能を定量的に明らかにする。加えて、ろ布に衝突した上昇気流の垂直・水平方向の分岐に影響するろ布の通気度と火の粉のトラップに影響するろ布の空隙径との関係を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度計上していた消耗品費を効率的な使用と節約などにより次年度使用額が生じた。また、COVID-19の対応で本年度に予定していた研究作業に関する出張の日数を減じたところ、計上していた旅費の支出が少なくなり、次年度使用額が生じた。出張の日数を減じたが、計画した実験はすべて遂行した。生じた次年度使用額は、次年度のろ布の購入及び研究作業に関する出張に充てる。
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