研究実績の概要 |
今年度は防災科学技術研究所で展開するK-netの既存観測点データと深層学習の一種であるLong-short term memory(LSTM)を用いてリアルタイム震度(Ir)の予測モデルの構築を試みた. 具体的にはある時刻から現在までの時系列データを用いてターゲット観測点の現在のIrを予測するモデル(0秒先モデル)と, ターゲット観測点のIrの将来予測の可能性の検証のために8秒先を予測するモデル(8秒先モデル)を構築した. 8秒先モデルの予測結果を入力観測点の距離で重み付けした時間ごとの加重平均値, PLUM法を模した入力観測点の最大値と比較したところ, MAE, RMSEともに本研究で構築したモデルの予測の精度が高いという結果が得られた. しかしながらIrのおおまかな形状は再現できているものの詳細を見てみると大きな外れ値も散見された. 上記の予測誤差の大きな原因の一つは訓練データ不足と考えられるので, その検証のために模擬データを作成してデータ拡張を試みた. ここでは上記期間のデータのうち欠損しているものを久保, 功刀(2022)によるIrの立ち上がりから最大震度に達するまでの形状の予測式と司, 翠川(1999)及び翠川他(1999)の強震動予測式を組み合わせて合成し, 訓練データとした. その結果、さらに予測誤差が小さくなり、データ拡張による予測精度の向上が認められた. また, 上記訓練データのすべてを模擬データで置き換えたところ, 観測データと混ぜ合わせた時よりもやや予測精度が向上するという結果になった. この結果は訓練に大量の模擬データがあれば観測データの少ない地域でもIrの予測が可能であると言うことを示唆している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度―5年度の目標に掲げているのは 1)IoTセンサの設置及びデータの蓄積 本研究では申請者がすでに作成したIoTセンサのシステムを, 申請者所属機関, 設置許可取得済みのボランティア, 公共施設に設置してデータ取得を行う. 2)既存観測点データを用いた事前学習モデルの構築とIoTセンサ設置場所の個別モデルの構築, 検証 であったが、1)についてはセンサの設置、データの取得ともに順調にできている。2)については既存観測点データを用いた事前学習モデルの構築については完了し、現在は学習モデルの最適化を目指し、細かいハイパーパラメータの設定やデータの長さ、タイムウィンドウの区切り方についての微調整を行っている。また、当初の案から方針を変え、模擬データを用いた学習を行ったところ、観測データのみの場合より高い予測精度を得られたことから学習データの無い場所に関しては模擬データを使用することで対応できる可能性を見出した。
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