研究課題/領域番号 |
22K04637
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
紅谷 昇平 兵庫県立大学, 減災復興政策研究科, 准教授 (10455553)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 災害対策本部 / 自治体 / 受援 / 人的支援 / 自然災害 |
研究実績の概要 |
2022年度は、先行的に実施してきた近年の大規模水害で被災した市町村への質問紙調査、被災市町村に対する人的応援についての都道府県へのインタビュー調査、及び全国47都道府県への質問紙調査等の分析を行った。まず、平成30年7月豪雨の愛媛県、及び令和2年7月豪雨の熊本県の事例調査から、被災直後については総務省スキームによる遠隔地の自治体からの人的支援よりも、地理的に近い県や県内市町村からの派遣職員が多かったことが明らかになった。次に近年水害で被災した四県へのインタビュー調査の結果、被災市町村の首長へのサポートや県と市町村の連携の円滑化のため管理職の県職員が派遣されており、それが効果的と評価されていた。また、被災の大きい市町村に対しては、県の中に専門のチーム・窓口を設けて情報の流れを集約し、効果的であった事例がみられた。さらに都道府県及び水害被災市町村へのアンケート調査では、多くの都道府県が「リエゾン派遣制度」や「都道府県内市町村の相互応援の仕組み」、「都道府県職員の被災市町村への派遣制度」を有しており、実際の水害時にも被災市町村に派遣された実績が多いことが明らかになった。一方、「幹部職員の派遣制度」については仕組みとして定められていない都道府県が多く、派遣実績も少なかったことが明らかになった。 これらの調査結果から、近隣(同一都道府県内)からの支援と遠隔地からの支援では、それぞれメリット・デメリットがあり、両者の組み合わせが重要であること、被災した県から市町村への人的支援では派遣する職員の職位(一般職員、管理職)に応じて担うべき役割が異なるため適材適所の派遣が求められることが考察された。今後、これらの知見を踏まえ、都道府県による被災市町村への支援体制が構築されることが求められる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度から先行的に調査、研究を開始しており、十分な準備が出来ていた。またコロナ禍による移動制限が緩和されたこともあり、年度別研究計画と実際の研究とで内容に差異はあるものの、全体としてはおおむね順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に水害被災自治体については研究が進んできたので、2023年度には地震で被災した自治体に対する調査と、国による現地支援の仕組みについての調査を進める予定である。地震被災自治体については、2022年度に北海道胆振東部地震で被災した安平町、厚真町に調査を行ったので、今後は、北海道庁、及び熊本地震の被災自治体に対してインタビュー調査を行う予定である。次に国による被災自治体への支援実態について明らかにできていないので、東日本大震災以降の大規模災害における国の支援体制、特に現地対策本部や現地支援チーム等の支援内容や被災自治体との連携実態について、質問紙調査やインタビュー調査を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
先行的に2021年度から調査に取り組んできたこと、インタビュー調査の一部をオンラインで実施したこと、2022年度と2023年度の研究内容を一部入れ替えたことにより、2022年度の使用額が予算より少なくなった。なお、2023年度には質問紙調査や遠隔地(北海道、九州)でのインタビュー調査を予定しており、これらに繰り越した研究費を充てる予定である。
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