研究課題/領域番号 |
22K04642
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
高田 一 中部大学, 工学部, 特任教授 (20154792)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ドローン / 初期消火 / 高層ビル / 消火ボール投擲 |
研究実績の概要 |
本研究は、ドローンを使った消火システムに関する研究および実証実験を行うものである。高層ビルの増加とともに火災も増加しているが、日本の消防署のはしご車は、地上18階(54m)まで届くのが最大である。そこで、本研究で開発するシステムは、消防車が到着する前に管理人室に設置された消火装置のボタンを押してから、GPSにより約1分で屋上に設置された消火ドローンが消火場所まで到着させることができ、ドローンから窓に向かって消火ボールを投げ入れれば、初期の段階で消火することができる。このドローンは、高層ビルだけに使用できるのではなく、次のような場合にも対応できる。密集地や路地裏での住宅火災や、丘の上や階段を数十段登ったところの家が火災のときには、消防車が到着してもホースを人力で運ぶ必要があり、消火開始までに時間がかかる。また、高速道路等で渋滞が発生している中での自動車火災には容易に現場に近づけない。そのような場合にこの消火ドローンなら、容易に近づくことができ、初期消火に対応できる。 2021年7月に「ボール発射装置」として特許が登録され、その特許を実現すべく消火ドローンを開発する。ドローンから消火ボールを発射する装置はドローンの下方に取り付ける。投擲方法は、回転しているローラにボールを挟んで投擲するタイプのものと、アームが回転して消火ボールを投擲するタイプのものを考えている。アーム式のものは、アームの先の手に相当する形状を変えれば、ボール状のものだけでなく、円筒状の消火ボトルも投擲できる。ドローンの購入は、組み立てる部品の調達が順調には進まなかったため、購入するだけにとどまっている。発射装置は実証実験を行うためのものを製作中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ドローンに付加する消火ボール発射装置のプロトタイプの試作と発射装置を取り付けるドローンを購入した。発射装置はドローンの下方に取り付ける。投擲装置はローラ式のものと、アーム式のもののプロトタイプはでき上ったが、消火実験に使用する装置は部品の調達が順調には進まなかったため、現在、製作中である。 ドローンの購入は、組み立てる部品の調達が順調には進まなかったため、購入するだけにとどまっている。発射装置は実証実験を行うためのものを製作中である。
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今後の研究の推進方策 |
消火ボール発射装置を製作し、消防署において、小屋を建て、開発したドローンを使って、実際の火災を消火する実験を行い、効果を確かめる。その際、消火ボールの初速、発射角度の測定、消火能力の検証を行う。消火ボールの空中での発射により、力学的にドローンの姿勢に影響がでるため、発射時のドローンの姿勢を測定する。また、その際、消火ボールの発射角度に誤差が生じるため、それを補正するための制御が必要であり、そのソフトウェア開発のデータを取得する。高層ビル火災では、窓から外に向かい爆風が吹く可能性がある。窓からの乱流に対して、消火ボールがどの程度前方に進むかを調査する。乱流に対抗するため、装置の改良、ボールの回転、速度の増加等をパラメータとして実験を行う。 消火ボールの速度を上げるため、ローラの駆動やアームの回転速度など発射部を必要に応じて改良する。 消火場所(高層マンションの階と部屋)に向かわせるためのソフトウェアを開発する。GPSを利用して、ボタン一つで目的地に到達させる。部屋の窓の外から消火ボールを投げ入れると同時に、より消火効率を上げるため、温度センサによる火元感知システムを開発し、さらに火元に近づいて消火ボールを投げ入れるための機能を追加する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響や世界的な半導体に不足により部品の調達が遅れ、投擲装置の製作が遅れている。プロトタイプは、ローラ式、アーム式共にほぼできているが、実際に消防署で消火実験を行う装置の製作が遅れている状況である。したがって、消耗品および試作機製作費を繰越すこととなった。そこで2023年度は、消火実験を行う試作機を完成させ、2年目の課題とともに研究を進めることとした。
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