研究課題/領域番号 |
22K04672
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
安藤 新二 熊本大学, 先進マグネシウム国際研究センター, 教授 (40222781)
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研究分担者 |
北原 弘基 熊本大学, 先進マグネシウム国際研究センター, 准教授 (50397650)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 曲げ降伏応力 / 曲げ延性 / 圧延材 / 結晶方位依存性 / 底面すべり / 非底面すべり / 双晶変形 / 単結晶 |
研究実績の概要 |
結晶粒径が20,50,100μmとなる純マグネシウム圧延材を作製し,この圧延材から圧延方向に対し曲げの中立面の方向が異なる4種類の試験片を用いて3点曲げ試験を行い,結晶方位による異方性を調査した.いずれの粒径においても,圧延面が中立面と平行な試験片(TR)は,中立面と垂直な試験片(TN)より曲げ延性が高いことがわかった.延性が異なった理由として,TR試験片は曲げにより底面すべりと{10-12}双晶により変形するのに対し,TN試験片では,底面すべりがほとんど起こることができず,双晶のみで変形するということがわかった. 合金元素の影響を調べるためにMg-7.5LiおよびMg-12Li多結晶圧延材を作製し,同様に曲げ試験を行なった.その結果,7.5Liの添加では純マグネシウムと大差ないが,12Liでは大きく曲げ延性が向上することがわかった.その理由として,12Li添加により錐面すべりが活動しやすくなったためであることがわかった.しかしながら,純マグネシウムとは異なり,TN試験片の延性はTR試験片より大きくなった.その理由として,中立面の移動量がTRのほうが大きくなり,より高い引張歪が必要となるため,曲げ延性が低下するためと言える. 単結晶における曲げ変形の結晶方位依存性を調査するため,Mg-(0.2~0.68)Y単結晶の曲げ試験を行なった.イットリウム添加により底面すべりのCRSSが増加するため曲げ強度が増加すること,また{10-12}双晶が抑制され,かつ引張側で錐面すべりが活性化するため,曲げ延性が向上することが明らかになった.Mg-0.6at%Li単結晶では,わずかな添加量にも関わらず,非底面すべりのCRSSが減少するため,曲げ強度がていかすることがわかった.また同時に底面すべりのCRSSも約半分に減少するということが見出された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までに,純マグネシウム圧延材およびMg-Li圧延材の研究をすることができた.また,Mg-Y単結晶の曲げ試験を0.2-0.68at%Yまでの広い範囲で行い.イットリウム添加による変形機構への影響が明らかになった.Mg-Li圧延材の変形機構を考えるためにMg-Li単結晶の曲げ試験を行った結果,作製した単結晶のLi濃度のずれが大きく所定の濃度の結晶を得ることができなかった.しかしながら,0.6at%Liといった少量添加でも,曲げ強度が低下することが明らかになった.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は,曲げにおけるすべり系および双晶系の活動性を調査するために,Mg-(6-12)at%Li合金単結晶の曲げ試験を行う.単結晶作製中のリチウム濃度の変化が生じないような作製条件を検討して対処する.また,Mg以外のHCP金属として,双晶の発生荷重方向が異なるZn多結晶材の曲げ試験,および主すべり系が異なるチタン圧延材の曲げ試験を行い,これらの結果をまとめてHCP金属の曲げ変形挙動を総括する.
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次年度使用額が生じた理由 |
単結晶作製に時間を要したために,3点曲げ試験に必要な機材の購入がなかった.さらに,論文発表したものの掲載まで時間がかかり,投稿費用が次年度になったため,次年度使用額が生じた.2024年度の国際会議で発表し,また成果として3つの論文を投稿予定であり,そのための旅費,および実験に必要な機材,論文投稿費用に使用することにする.
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