研究課題/領域番号 |
22K04691
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
田橋 正浩 中部大学, 工学部, 教授 (60387636)
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研究分担者 |
後藤 英雄 中部大学, 工学部, 教授 (00195942)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | Zn4Sb3 / Jonker plot |
研究実績の概要 |
酸化物亜鉛粒子を添加した熱電材料Zn4Sb3の導電率とゼーベック係数の温度依存性を測定した。導電率とゼーベック係数は酸化物粒子添加量の影響を大きく受けた。導電率は添加濃度0.5wt%において最大値を示した。ゼーベック係数は添加濃度に対して単調に増大する傾向にあったが、添加濃度0.5 wt%では大きく減少する特異な特徴が見られた。 これら導電率とゼーベック係数の関係をJonker plotで解析した。横軸を導電率の自然対数、縦軸をゼーベック係数としたグラフにおいて、右上にプロットされる条件ほど熱電材料として有望だと知られている。添加量0.3wt%と0.5wt%の試料が最も右上にプロットされたことから、適切な濃度の酸化物粒子を添加することで熱電特性は大きく向上することがわかった。またその傾きにも注目すると、無添加の試料では145μV/Kを示したが、添加量の増加に伴い傾きは減少し、0.5wt%において傾きは最小値96μV/Kを示した。束縛が極めて弱い自由キャリアにおける傾きは86μV/Kを示すことから、酸化物粒子を適量添加することで束縛の弱い伝導機構が発現されることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Jonker plotによる導電率とゼーベック係数の解析が熱電特性の向上に最適な酸化物粒子の添加条件の探索に有益であることがわかった。一方で、母体となるZn4Sb3インゴットは、高純度なZnとSbの粉末を原料に用いて、二重管封入法で溶融・凝固を行うことで得ている。得られたインゴットは単相のZn4Sb3ではなく、わずかにZnが析出することが明らかになった。そこで得られたインゴットを粉砕し、再度、二重管封入法で溶融・凝固を行うことで単相Zn4Sb3の合成を試みている。これにより、酸化物粒子添加の効果がこれまで以上に顕在化することが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、熱電特性向上に寄与する酸化物粒子の最適な添加条件に関する知見を得ることを目指したい。 酸化亜鉛添加の効果については、Jonker plotによる導電率とゼーベック係数の関係の解析結果から、熱電特性向上に関する手がかりを得ている。同様の手法を用いて、酸化錫や酸化セリウムなどを添加した試料に対して熱電特性の評価を進める。これら酸化物の添加量と熱伝導率の温度依存性について測定を行い、性能指数の算出を行う。酸化物材料の密度、バンドギャップなどの観点から、性能指数ZTにおよぼす酸化物粒子の添加条件を比較検討する予定である。
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