研究課題/領域番号 |
22K04696
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
綿打 敏司 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (30293442)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 結晶育成 / 透明酸化物 / 固液界面 / 浮遊帯溶融法 / 界面形状制御 |
研究実績の概要 |
光学式加熱浮遊帯溶融法による透明酸化物結晶の高品質化に関わる研究を行ってきた.透明酸化物結晶育成時に見られる凹型の育成結晶と溶融帯との界面形状が育成結晶の結晶欠陥の要因となっていると推定し,その形状制御を集中加熱に用いる回転楕円面鏡の下方傾斜に行うことを目的に集中加熱炉の改造を実施した. 2種類の透明酸化物Ca12Al14O33(以下C12A7)とLu3Al5O12(以下LuAG)を検討対象として界面形状と回転楕円面鏡の下方傾斜角との相関を調べた.その結果,C12A7では,凹型の界面形状を凸型に制御することで結晶育成の安定化に成功した.ただ,通常の原料棒配置で下方傾斜を行うと返って溶融帯中に大きな気泡が形成されやすくなり,溶融帯の保持が困難になった.原料棒の配置を工夫することで溶融帯中に生じる気泡を低減し,溶融帯を安定化させることができた.そのような原料棒の配置により,下方傾斜効果を再現性良く調べることが可能になり,通常の集中加熱条件では凹型となる溶融帯と育成結晶との界面形状が下方傾斜角度の変化に伴って系統的に凹型から凸型に変化することを明らかにした. 一方,LuAGでは,凹型界面形状の系統的な変化が得られず,より注意深く検討する必要があることが解った.光の集中による加熱では,育成結晶の透明性や表面の平滑性により,集光する光の加熱される結晶や原料棒,溶融帯の表面における反射や透過状況が変化することに起因していると思われる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LuAG結晶の育成では注意深い検討が必要であることから遅れていると判断段されるが,C12A7結晶の育成における界面形状制御とそれに伴う結晶育成の安定化は想定以上に良好な結果であったため.
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今後の研究の推進方策 |
良好に進捗しているC12A7については,育成結晶の大口径化を行う.その上で育成結晶に残存する気泡やクラックの状況を調べ,それらに対する結晶育成の回転楕円面鏡の下方傾斜角度と育成結晶径との相関を調べる. 注意深い検討が必要なLuAG結晶については,慎重に回転楕円面鏡の下方傾斜効果を調べる計画でいる.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究で納入した実験遂行に必須の集中加熱炉の回転楕円面鏡が実験中の接触により一部破損し,交換が必要と見込まれる状況となったことから,購入費用をねん出する必要に迫られる可能性が高いと見込まれたため. そのため,鏡購入費を計上するほか,原料試薬,結晶成長に必要な消耗品を計上し,界面形状制御と育成結晶に生じる結晶欠陥との相関を明らかにする予定である.
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