研究課題/領域番号 |
22K04697
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
宮嶋 尚哉 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (20345698)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 水熱処理 / ポーラスカーボン / モルフォロジー制御 / 微細組織 |
研究実績の概要 |
本研究では,付加的な化学賦活を用いることなく,ハードカーボンのナノ空間と異種活物質担持を同時に精密制御しうる機能性ポーラスカーボンの製造方法を確立することを目的とする。具体的には,金属イオンと錯形成する有機物原料に対して,バイオマスの改質処理の1つである水熱処理を活用することで,炭素収率の高いカーボン前駆体に改質し,その後,単純な焼成処理を行うことでカーボン内へのナノ空間の構築と金属種の高分散担持を試みる。合わせて,種々の用途を想定した材料設計の最適化及び実用化試験を行う。初年度は以下の項目について検討し,新たな知見を得た。 (1)グルコース誘導体の水熱改質:グルコース骨格の置換種の異なる誘導体に対して水熱・炭素化処理の影響を系統的に調べた結果,各置換基は水熱改質時に有機酸として分解し,水熱チャーを形成する反応中間物の凝集性に影響を及ぼすことが判明した。 (2)金属吸着キトサンの水熱改質:種々のイオンを吸着させたキトサンの水熱改質を行ったところ,水熱処理特有のバルク形態の制御と,金属種に対応した細孔径制制御を同時にもたらす炭素体の調製が可能となった。また,担持金属の働きにより無担持炭素体に比べてヒ素吸着特性の向上が認められた。 (3)ショ糖の触媒黒鉛化:炭素体の微細構造制御を目的として,ショ糖の水熱改質に及ぼす鉄粒子添加の影響について調べた結果,Feの触媒黒鉛化によって,部分的に黒鉛化が発達した球状メソポーラスカーボンが誘導できることが明らかとなった。 これらの研究成果について,関連学会や国際誌等で発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3つの研究テーマを通して,本研究の戦略や方向性が妥当であることが確認できた。特に,原料中に組み込んだ金属種が水熱処理時に生成する強酸性の有機酸に全て溶出することなく,目論見通り一部は水熱チャー中に取り込まれ,その後の炭素化過程で誘導される炭素体の微細構造やモルフォロジー特性に好影響を与えることが明らかとなった点は大きな成果と言える。
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今後の研究の推進方策 |
種々の金属種を化学的な相互作用で原料有機物に組み込み,これを水熱処理に供することで水熱処理特有の改質効果が発現し,導入金属種と炭素前駆体との反応性の違いによって,バルク/細孔の両モルフォロジー特性を制御できることが明らかとなった。次年度は,さらに緻密に両特性を制御できる水熱処理条件の絞り込みを行うとともに,各炭素体のキャパシタ特性や種々のガス吸着特性を調べ,実用化研究に発展させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)国際学会の事前登録とその諸経費を見込んでいたが,現地開催がキャンセルとなったことから繰越分が生じた。 (使用計画)次年度の本人および研究協力者2名(所属学生)の国内外の学会参加費ならびに旅費に追加計上する予定である。学会行動が制限された場合は,研究遂行に不可欠な高純度ガスや試薬の購入費に充てる予定である。
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