研究課題/領域番号 |
22K04706
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
中村 考志 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (80591726)
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研究分担者 |
梅津 理恵 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (60422086)
石崎 学 山形大学, 理学部, 講師 (60610334)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 金属窒化物 / 磁気特性 / 窒化反応 / 多孔性配位高分子 / プルシアンブルー |
研究実績の概要 |
次世代通信で利用される高周波数帯領域(>40 GHz)における電磁波吸収材への利用を考え、新規磁性材の創製に取り組んでいる。特に、高周波数帯で電磁波吸収に関わる物理量である飽和磁化が急激に減衰する物理的限界(スニークの限界)を超える新規磁性材の創製のため、磁性体の組成の探索と粒子形状の異方化の検討を進めている。 2022年度にはMnを導入した窒化物を合成することに成功し、0.1~0.25の時Mnが無い時に比べ1.8倍飽和磁化が向上することを見出した。しかし課題として金属酸化物(MnOなど)が生成していた。 2023年度はこれを解決するため、反応条件の最適化を行い金属酸化物の生成を抑制できる温度プロファイルを見出した。特性評価について、これまでMnの導入による飽和磁化の向上の原因を明確にできていなかった。これに対し第一原理計算を利用し原因究明に努めた。また、結晶異方化に関しては、既往の研究(Journal of Alloys and Compounds, 939, 2023, 168773)に従い、前駆体を合成し構造の評価を進めた。これらの結果をまとめ、2023年度は企業への技術紹介を1件行い、1件の学会発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度の研究計画では「窒化物の組成と構造評価」、「磁気特性評価」、「アスペクト比の異なる前駆体調製」を計画していた。これに従い、今年度はこれまで合成した等方性窒化物の評価について、XRF、XRD、SQUID等を用いてこれまで合成した10以上の試料の評価を継続すると共に計算科学を取り入れた物理特性評価をすすめると共に異方性窒化物合成の為の前駆体調製に取り組んだ。また、計画にはなかった、窒化物の合成条件の最適化を行った。 これまで合成した11種類のサンプルについて2022年度に構造評価と磁気特性との関係性の調査を進め、Mn/Ni比率が0.2付近の時に飽和磁化が最大1.8倍になることを確認した。しかし、構造(結晶相、窒化物/酸化物比、結晶子サイズ、結晶格子サイズなど)と磁気特性との関係を調べたが明確な関係性をつかめていなかった。 2023年度は計算科学(Materials Studio, CASTEP)を導入しMn, Fe, Niの比率及び置換サイトの異なる11種類の置換型固溶体モデルを作成し、密度汎関数法と平面波擬ポテンシャルに基づいた第一原理計算実験によりs, p, d軌道のDOS、バンド構造についてスピンを考慮した状態で計算を行った。結果の解析を現在進めている。 異方性窒化物合成の為の前駆体調製について、これまでの合成経験をベースに実験を進めたが十分な異方化は確認できなかった。2023年に異方性のプルシアンブルーに関する報告がなされたため、追試する形で前駆体の調製を行った。現在、合成物の評価を進めている。 合成条件の最適化について、これまで窒化反応の際、酸化物が生成する問題について、炉内の材質および反応環境の改善により酸化物の生成が抑制できることを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
第一原理計算結果の解析とマンガンの添加による飽和磁化向上の理解を行う。異方性前駆体の窒化を行い、得られた窒化物の磁気特性を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度の一部に計算科学を重点的に行う期間があったため、計画していた消耗品(窒化反応の為のアンモニアガス)に予算を利用しなかった。そのため約13万円の次年度使用額が生じた。2024年度は異方性前駆体の窒化反応のためアンモニアガスの使用量が増えるため、差額分をこれに利用する計画である。
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