研究実績の概要 |
窒化アルミニウム(AlN)は、優れた理論熱伝導率320 W/(m・K)、シリコンに近い熱膨張係数そして、高い絶縁性をもつことから半導体の放熱基板材料として30年以上も研究されている。しかし、AlNは難焼結材料であり、常圧で緻密焼結体を得る手法としては、主に酸化イットリウム(Y2O3)を焼結助剤とした液相焼結が一般的である。しかし高品質なAlN焼結体を得るためには、1900℃以上の高温で数十時間以上も焼成しなければならず、製造コストが高いことが課題である。 申請者らは、これまでに高出力レーザーを用いて酸化アルミニウム(Al2O3, アルミナ)や炭化ケイ素(SiC)といった代表的なセラミックス材料の短時間焼結技術の開発を行ってきた。その中で、物質の光吸収係数を考慮することで、レーザーを用いて物質の粒子界面近傍を選択的に加熱できることを見出した。その技術を応用すれば、選択的にAlNの粒界を加熱でき、効率的に焼結体を作製するためのプロセスに適用できないかと考えた。しかし、レーザーを用いてAlNを焼結する場合、Y2O3を焼結助剤として用いても、レーザーを吸収せず発熱に寄与しない。そのため、本研究ではレーザー焼結用に専用の焼結助剤を新規開発し、緻密なAlN焼結体の作製プロセスの開発を行った。本研究では、レーザー焼結用の助剤としては、可視光領域に吸収端のある酸素欠損型のY2O3-δを焼結助剤として検討した。酸素欠損させた黒色のY2O3-δは、真空雰囲気中で炭素(C)とY2O3の混合粉末にレーザー照射し溶融凝固させ、ボールミルで微粉化することで作製した。その結果、酸素欠陥により波長域1000 μm近傍での光吸収があることが明らかとなった。
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