研究課題
本研究では、熱CVD法によりMo基材上へのIr-Mo傾斜膜の成膜を行い、得られるIr-Mo膜の膜厚や組織・微細構造と機械的強度の関係性を見出し、高温環境下でも剥離することのないIr-Mo傾斜膜の実現可能性を明らかにすることを1つ目の目的とし、さらに実際にMo坩堝へIr-Mo傾斜膜を成膜し、中に酸化物原料を入れ、高周波誘導加熱法により溶融させることで、化学的安定性、また実用性を実証することを2つ目の目的としている。令和4年度は、1.小型熱CVDによる成膜条件最適化、2.大型CVD立ち上げ、3.膜構造・組織評価条件出し、4.機械的強度評価条件出しを計画し、研究を進めた。1.成膜条件最適化に関しては、Iridium (III) acetylacetonate (分子式:C15H21IrO6)を用いたMo基材上へのCVD成膜実験を行い、Ir膜の成膜条件検討を進めた。キャリアガスの種類(Ar、H2)および流量、圧力、基材の温度の最適化を行うことで、Ir-Mo傾斜膜が得られた。2.大型CVD装置立ち上げに関しては、高効率な成膜を行うために加熱方式を高周波誘導加熱としたCVD装置の検討を進め、シミュレーションをもとにしたコイル・炉構造の検討を行い、Mo基材の温度:1500℃程度の高温下でも成膜が可能となった。3.構造・組織評価については、イオンミリングによる膜断面のSEMおよびEBSD観察の条件検討を進めた。4.機械的強度評価に関しては、スタッド・プルを用いた評価系の検討を進めた。令和5年度は、大型CVD装置を含めて、Ir成膜条件の最適化を進め、膜構造および機械的強度の本格的な評価を進め、成膜条件へのフィードバックを行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
おおむね計画通りに進めている。
高周波誘導加熱型大型CVD装置の立ち上げが終了したため、小型CVD装置で得られた成膜条件をベースに、モリブデン基材および坩堝へのイリジウム成膜条件出しを進める。また、Ir-Mo傾斜膜については、SEMやEBSDにより断面観察・評価を行い、その結果を成膜条件にフィードバックさせる。加えて、令和4年度に立ち上げた機械的強度評価手法を使用し、膜強度についても評価を行い、同様にその結果を成膜条件にフィードバックさせる。また、Ir-Mo傾斜膜を成膜したモリブデン坩堝を用いた酸化物溶融試験のための準備を進める。
令和4年度は、新型コロナの影響で、国内・国際学会への参加が出来なかったため、次年度使用額が生じたが、令和5年度に積極的に国際学会での成果発表を行い、使用する予定である。
すべて 2023
すべて 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)