研究課題/領域番号 |
22K04724
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
高橋 紳矢 岐阜大学, 工学部, 助教 (40377700)
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研究分担者 |
武野 明義 岐阜大学, 工学部, 教授 (70227049)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 周期メソポーラスフィルム / セルロースナノファイバー / はっ水湿潤性 / 動的ぬれ性 / 大気集水性 |
研究実績の概要 |
1.ナノ材料を埋め込んだポリプロピレン複合材の作製と評価 これまでに最適化した手法を用い、ポリプロピレン(PP)フィルムにクレーズ複合を施し、ナノ材料埋込み用の周期微多孔フィルムを作製した。続いて、このフィルムに基準となるカーボンナノチューブ(CNT)以外のナノ材料を埋め込んだ複合材試料を調製し、界面化学評価を行った。さらに、このフィルムの応用としての大気集水性についても初期検討を行った。 2.セルロースナノファイバーを埋め込んだ同複合材の界面化学特性 埋込みナノ材料として、セルロースナノファイバー(CNF)と親水化したCNF(HPb-CNF)を用いた。CNF/PP表面の走査電顕像を観察したところ、CNT/PPにみられたような微多孔相内の襞状のCNT小凝集塊ではなく、それより大きな凝集単位で、しかも局所的にCNFが埋め込まれていることが確認された。こうした表面の凝集構造の相違がぬれ性に対して異なる効果を発現するものと予測した。微多孔相に対して平行、垂直の二方向から観察した接触角、滑落角測定の結果、ナノ材料の外殻表面の極性と上述の表面形態に依存した対水ぬれ性、水滴付着力を示すことが判明した。加えて、CNT/PPを含めた各試料の表面自由エネルギー(SFE)測定の結果、見掛けのはっ水性に反して水滴の付着力が増大した主因はSFEの分散力成分の増大であったことが判明し、埋め込まれたナノ材料の集合構造に起因した凝集力が重要であることが示唆された。一方、先行研究でCNT/PPが示したはっ水だが水を付着する、はっ水湿潤性を同様に有する材料はCNFを疎水化したHPb-CNF/PPであることが示された。 3.CNT/PP複合材の大気集水性 現状、当該材料の集水性は他の比較材料との間に有意な有効性を見出せていない。集水性の向上には、水滴の着滴性よりも排滴頻度を高める必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1)総合的な動的ぬれ性の評価において、解析手法の適格性の検討不足で、当初の予定であった液滴の形態評価やそのダイナミクス検証に手間取っている。 2)ナノ材料の埋込み濃度依存を考慮した試料作製が進まず、系統的な表面モルフォロジーや表面化学組成解析が遅れている。 3)カーボンナノチューブ(CNT)が水相環境で内包固定すると言われている極微量の水の定量的解析手法がまだ確立できていない。これに関係して、水付着性の増大がCNT内包水によるものであるという当初の予測と異なる結果が得られてきたのも理由の一つである。これにより、CNTなど、ナノ材料の微多孔相内凝集構造と水付着性との関係性の検証が必要となった。 4)大気集水性の検証において、新たに微多孔相作製工程の見直しが必要となった。具体的にはクレーズ複合を、さらに多方向から行う工夫とこれに伴うナノ材料の担持効率の維持手法の改良を行うこととなった。 5)集水性評価にとって重要な着滴-排滴過程において、外部機器による解析が必要となった。具体的には、各試料表面の水滴形成過程のその場(in-situ)観察を外部機関の環境制御型の電子顕微鏡を用いて行う予定となっている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度はやや遅れ気味ではあったものの、埋め込むナノ材料のもつ極性に依存した界面化学特性が発現するという新たな知見が得られたことと、水付着性が微多孔相内に埋め込まれたナノ材料の凝集形態に大きく依存する可能性を見出した。一方、本材料の大気集水性においては、他の比較材料に対する有効性が現時点で見出せていないものの、本材料の着滴性が他とは特異的に異なる知見を得たことと、着滴に伴う新たな材料表面の評価手法の開発などの興味深い結果を得ている。以上を踏まえて、今後は継続的に以下の方針で本課題について研究を実施する予定である。 ○ ナノ材料の埋込み濃度を考慮した試料群の界面化学特性、表面形態、最表面の化学組成解析をさらに進めて、発現する動的ぬれ性との関係性を確立する。とくに、水付着性とナノ材料の表面凝集構造の関係、接触角などに反映される材料表面の化学的寄与程度などの検証を進める。 ○ 本課題材料の集水性検証手法の開発と集水性効率の改善手段の確立を進める。具体的には、着滴における滴形成過程のin-situ観察・解析、微多孔相作製工程におけるクレーズ複合方向のマルチ化などに取り組みたい。
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