研究課題/領域番号 |
22K04731
|
研究機関 | 地方独立行政法人大阪産業技術研究所 |
研究代表者 |
池田 慎吾 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 主任研究員 (60511152)
|
研究分担者 |
小林 靖之 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 総括研究員 (00416330)
中谷 真大 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 研究員 (10882855)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 光触媒 / 水素吸蔵材料 / 水素発生 / 水素貯蔵 / エネルギー変換 |
研究実績の概要 |
光電変換材料と水素吸蔵材料の複合化により、光照射を駆動力とする水の電気分解反応を利用した新たな水素吸蔵システムの開発を目的とし、二年度目にあたる令和5年度はチタン酸ストロンチウム粉末とパラジウムの複合材料について検討を行った。パラジウム塩とギ酸を含む水溶液中にチタン酸ストロンチウム粉末を分散させ、超高圧水銀ランプを用いて紫外光を照射することにより、光電着法によりパラジウムを担持した複合材料を作製することに成功した。このとき、水溶液中のチタン酸ストロンチウム分散濃度、パラジウム塩濃度を変化させることにより、複合材料中のパラジウム担持量を制御可能であることをICP、STEM-EDS、FESEM-EDSなどの機器分析により明らかにした。さらに、パラジウム担持チタン酸ストロンチウム複合材料を無電解パラジウムめっき液に加えることで、パラジウム担持量を増大させることにも成功した。 作製した複合材料をギ酸水溶液中に分散させた状態で超高圧水銀ランプを用いて紫外光を照射した後、複合材料粉末をろ過、水洗、乾燥させ、密閉容器に封入し、容器内を窒素雰囲気とした。パラジウムの水素放出温度まで容器を加熱・保持した後、容器内のガスを採取し、ガスクロマトグラフィにより気体成分を定性分析した結果、窒素に加えてわずかに水素が検出された。これらの結果から、光電着法により作製したパラジウム担持チタン酸ストロンチウム複合材料に対し、水溶液中で紫外光を照射することにより、パラジウム中に水素が吸蔵される可能性が示唆されたが、反応効率は低いことが伺える結果となった。次年度は、チタン酸ストロンチウムにアルミニウムをドープすることにより、光触媒反応効率の改善について検討する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光電着法によりパラジウム担持チタン酸ストロンチウム複合材料を作製することに成功した。作製条件と無電解めっきの手法によって、複合材料中のパラジウム担持量や形状といった微細構造因子の制御が可能であることが示された。水溶液中に分散させたパラジウム担持チタン酸ストロンチウム複合材料に紫外光を照射することによって、わずかながら複合材料中に水素が吸蔵された可能性が示唆されたことから、研究計画としては概ね順調に進展していると判断している。
|
今後の研究の推進方策 |
光触媒効果による光電変換の挙動は、半導体のバンドギャップエネルギーやそのエネルギー準位に大きく依存することが予想されることから、二酸化チタン以外の金属酸化物半導体とパラジウムの複合体の作製とその水素吸蔵特性評価について引き続き検討を進める。水素発生/吸蔵効率の高かった半導体とその特性について調べた後、水素吸蔵材料をパラジウム以外の材料へ変換することについて検討を始める予定である。また、複合体の構造制御についても並行して予備的な検討を実施する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
令和5年度は、主に複合体試料の作製ならびに機器分析装置を用いた構造解析に注力したため、試薬類や純水製造装置の購入に研究費を充当し、試料作製と特性評価の効率を高めた。実験内容の効率化や本務その他の研究補助事業への参画等の影響により実験予定の延期などがあり、当初予定よりも消耗品費が低減された他、学会発表等に予定していた予算を繰り越すこととしたため、次年度使用が発生した。次年度の予算は、これまでの研究経過を受けて新たな取り組みも実施するため、主として研究に係る物品購入費ならびに成果発表に係る費用に充当する予定である。
|