ポリエーテルエーテルケトンは高分子材料のひとつで、生体適合性や生体機能性に優れていることから、医療デバイスとして使用されている。本研究では、高分子材料を溶融状態にした後、素早く、薄く引き伸ばしながら積層することで立体造形体を得る熱延伸3Dプリンティングという手法を確立することで、ポリエーテルエーテルケトンの高強度化および骨類似機能化を目指すとともに、熱延伸3Dプリンティングで得られる造形体の結晶構造(結晶化度や配向性など)が機械的性質(強度や力学的異方性など)に及ぼす影響とそのメカニズムを明らかにすることを目指している。令和4年度は、主として結晶構造や機械的性質の分析に資する種々の造形条件(ノズル温度、テーブル温度、積層ピッチ、ノズルの走査速度、ノズルの走査パターン)で熱延伸3Dプリンティングした造形体およびその後アニーリング処理した造形体を作製した。新たなスライスソフトを導入したため、これまでとは異なるノズルの走査パターンでの造形が可能となった。得られた造形体について、実体顕微鏡を用いて積層間の接合状況および走査間の接合状況を観察した。また、造形環境を考慮して、フィラメント乾燥供給システムの設置および造形装置内の保温性を高めるため、アルミフレームとアクリル板を用いて3Dプリンタ全体を覆うなどの工夫を施した。フィラメントの乾燥および装置内保温性を高めることで造形の繰り返し精度および安定性が向上した。
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