研究課題/領域番号 |
22K04754
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
齋藤 嘉一 秋田大学, 理工学研究科, 教授 (10302259)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | Cu-Ti-Mg合金 / 等温時効 / 水素中時効 / 不連続析出 / TEM/SAD / STEM/EDS |
研究実績の概要 |
本研究では、Cu-Ti合金の特性改質法として、微量のMg添加に加え、水素中時効を複合した組織制御を試みた.そこでCu-Ti-Mg三元系合金の水素中時効挙動を調査し、これと並行して電子顕微鏡法を駆使した組織・構造学的評価を行い、Mg無添加の場合や大気中時効の場合との比較から、複合制御法の有効性を評価した.得られた知見は以下の通りである. 1.水素中時効の影響を大気中(真空中)のそれと比較すると、時効ピークに達するまでは、導電率とビッカース硬さのいずれも雰囲気ガスの違いによらずほぼ同水準値を維持して増加する.ピークを過ぎると、水素中時効の方が導電率の上昇率と硬さの減少率が目立つようになり、特にMg含有系においてその傾向は顕著化する. 2.Cu-4Ti-2Mg合金に水素中時効を施すとβ’相による析出強化が発現するに加え、Cu-4Ti合金の場合以上にTiH2の生成が活性化する.つまり、Cu-Ti系に対するMg添加は、同合金に水素中時効を施した際のCu母相中のTi固溶量の低下を促し、導電率を向上させるうえで有効である. Cu-4Ti-2Mg合金(at.%)に対する水素中時効挙動について、初期段階の特徴はやはり2元系合金に対する大気中時効の場合と変わらなかったが、時効ピーク以降に大きな違いが現れ、導電率上昇と硬さ低下が顕著化した.特にPA時の組織学的特徴において特筆すべき点として、Cu母相内に多数の差し渡し数十nmのTiH2析出物の生成が確認されたことから、微量Mgの添加に当該析出の促進作用があるものと推測された.この現象は、Tiを含むFCC-Cu母相に対して、さらに一定量の原子サイズの異なる溶質原子(Mg)が置換固溶することで‘隙間’の多いFCC構造が構築され、このことが時効中の水素原子の体積拡散を促す要因となり、ひいてはTiH2の核生成・成長を早める結果をもたらしたと解釈された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに,チタン銅の新しい組織・特性制御法として少量Mgを添加したCu-Ti固溶体合金を450 ℃での水素中時効に供する方法を提案し,その効果を検証した。その結果,Cu-Ti系に対して新たにMgを添加した3元系合金においても,2元系の場合と同様に水素中時効による特性改質の有効性を確認することができた。このことは当研究課題の達成目標の一つを検証したことに相当する。
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今後の研究の推進方策 |
Cu-4TiとCu-4Ti-3Mg合金に対して450℃で水素中時効を施した試料を用意し,機械的性質を詳しく調べるために引張試験を行い,最大引張強さ,破断伸び等の情報を得る。一方,当該の時効材に対して電子顕微鏡を駆使して組織・構造解析を行い,材料物性と組織の関係について評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の経費として予定していた電子顕微鏡設備(学内設備)の保守について,作業の必要が生じなかったために,これを次年度に実施する予定である。
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