研究課題/領域番号 |
22K04757
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
大木 基史 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (50293204)
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研究分担者 |
小西 博巳 新潟大学, 自然科学系, 教授 (30705215)
齋藤 庸賀 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 研究開発本部機能化学材料技術部プロセス技術グループ, 副主任研究員 (90806001)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | WC-Ni硬質皮膜 / 形成メカニズム / 高硬度 / 耐摩耗性 / 金型長寿命化 |
研究実績の概要 |
申請者のWC-Ni硬質皮膜に関する先行研究において既に実施済みのプロセス条件(結晶化熱処理:加熱温度650℃-保持時間10 / 30 /60分,ガス浸炭処理:加熱温度900℃-保持時間10分)の3種類において,「結晶化熱処理前(めっき施工後)」「結晶化熱処理後」「ガス浸炭後」各段階の試験片を作製した. また,WC-Ni硬質皮膜の成膜プロセスにおけるWC結晶およびNi-Fe固溶体母相の形成メカニズムを解明するためのTEM観察・分析を実施するにあたり,まずはTEM観察・分析用薄片試料作製のノウハウを蓄積する必要があるため,既存のWC-Ni硬質皮膜を用いて試験片切断→溶液処理による皮膜試料抽出(基材の溶解除去)→イオンミリングによる皮膜試料の薄片化,の一連の作業を試行し,薄片試料作製手順および作業条件の最適化を行った.これにより,WC-Ni硬質皮膜のTEM観察・分析用薄片試料作製手順をほぼ確立することができた. 上記試行と並行して,当初2023~2024年度に実施予定だった「WC-Ni硬質皮膜を被覆した丸棒試験片を用いた連続打ち抜き試験」を,既存のWC-Ni硬質皮膜施工条件を適用して試行した.その結果,丸棒試験片エッジ部における顕著な皮膜損傷・摩耗が発生し,既存のWC-Ni硬質皮膜性能では研究目的である「金型長寿命化」が困難であることが明らかとなった.そこで,「厚膜化」「高硬度(高耐摩耗性)化」を達成するための皮膜施工条件の検討を行なった.その結果,既存のWC-Ni硬質皮膜より膜厚を増加させ,かつ表面硬度を向上させることが可能な皮膜施工条件の開発に成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
・TEM観察・分析用薄片試料作製について:試料作製手順をおおよそ確立できた段階で作業を担当していた学生が諸般の理由で年度途中に当該研究から離脱したため,急遽代理の人材を確保することが出来ず,そこからのTEM観察・分析用薄片試料作製作業が頓挫してしまったため. ・連続打ち抜き試験について:新しく開発したWC-Ni硬質皮膜施工条件を適用した,連続打ち抜き試験用のWC-Ni硬質皮膜被覆丸棒試験片の作製を進めたところ,電気Ni-Wめっき時点での皮膜剥離現象が多発するようになり,連続打ち抜き試験実施以前にまず皮膜剥離への対処を優先せざるを得なくなったため.
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今後の研究の推進方策 |
・TEM観察・分析用薄片試料作製について:年度が変わり新たな担当学生を確保できたため,昨年度ほぼ確立したTEM観察・分析用薄片試料作製手順を適用して,まずは昨年度作製した「結晶化熱処理:加熱温度650℃-保持時間10 / 30 /60分,ガス浸炭処理:加熱温度900℃-保持時間10分」試験片の「結晶化熱処理前(めっき施工後)」「結晶化熱処理後」「ガス浸炭後」各段階のTEM観察・分析用薄片試料を作製し,順次TEM観察・分析を実施する. ・連続打ち抜き試験について:基材エッジ部形状の最適化,およびめっき施工条件の見直しにより皮膜剥離現象は改善する方向にあるが,まだ完全に抑制するまでには至っていないため,引き続きめっき施工条件の最適化を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由:物品費(設備備品費)として「走査型電子顕微鏡(中古品)」の導入を予定しており,取扱業者および導入機種の選定までは進められたが,最終的に導入価格において取扱業者との折り合いが付かず導入決定に至らなかったため. 使用計画:今年度請求助成金の一部を合算して「走査型電子顕微鏡(中古品)」導入経費を増額した上で,引き続き取扱業者および導入機種の選定を進める.
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