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2022 年度 実施状況報告書

高強度超弾性ステントの開発

研究課題

研究課題/領域番号 22K04765
研究機関愛知工業大学

研究代表者

松井 良介  愛知工業大学, 工学部, 准教授 (00632192)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード形状記憶合金 / TiNi合金 / ステント / 耐食性 / 疲労
研究実績の概要

ステントの血管拡張能力を表すラジアルフォースや変態温度を評価することによって,高拡張力を発揮できるステントの加工条件に一定の目途を付けた.具体的には冷間伸線加工率60%のTiNi形状記憶合金チューブを使用し,真直処理を施した後に低温で拡張するプロセスである.この方法で作製したステントは従来品相当の比較材に対して同等以上のラジアルフォースを発揮することが明らかになった.
一軸方向に圧縮する疲労試験も実施し,上記プロセスで作製したステントの耐久性も明らかにした.その結果,従来品相当の比較材に対して遜色のない寿命が得られることがわかった.但し,現状ではレーザーカットによる酸化物付着のためステント表面が良好な性状ではないと判断している.この点については既に計画に盛り込んでおり,今後計画に従って酸洗いや電解研磨等を施す等の改善方法を検討する方針である.
当初計画に含めていなかった実施項目として「FEM解析」と「内圧変動による疲労寿命の評価」がある.FEM解析ではソルバにMSC. Marcを用いる.局所的な応力やひずみの評価を行い,素材となるTiNi形状記憶合金の力学特性およびステント形状の最適化に役立てる.また,内圧変動による疲労寿命の評価は実使用を想定したものである.ステントを挿入した模擬血管に内圧変動を繰返し発生させる仕組みである.そのための試験装置を新たに設計・製作する.
これらの項目を新たに計画に採り入れて次年度以降の研究を進める方針である.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ステントの血管拡張能力を表すラジアルフォースや変態温度を評価することによって,高拡張力を発揮できるステントの加工条件に一定の目途を付けた.具体的には冷間伸線加工率60%のTiNi形状記憶合金チューブを使用し,真直処理を施した後に低温で拡張するプロセスである.この方法で作製したステントは従来品相当の比較材に対して同等以上のラジアルフォースを発揮することが明らかになった.
一軸方向に圧縮する疲労試験も実施し,上記プロセスで作製したステントの耐久性も明らかにした.その結果,従来品相当の比較材に対して遜色のない寿命が得られることがわかった.但し,現状ではレーザーカットによる酸化物付着のためステント表面が良好な性状ではないと判断しているため,今後酸洗いや電解研磨等の表面処理を実施する予定である.
具体的な成果は以下の通りである.(1)ステント素材と同組成のTiNi形状記憶合金線材において,冷間加工率が高くなるほど加工硬化が顕著に生じるため,マルテンサイト変態応力が高くなる.(2)ステント素材となるチューブ材の応力-ひずみ曲線は室温で大きなヒステリシスループを描き,除荷過程でひずみが完全回復する超弾性を示す.(3)冷間引抜加工の断面減少率で示される加工率の違いは,相変態温度に影響を与えない.(4)レーザーカットや熱処理によってTi酸化物が生成され,相対的に材料内のNi濃度が上昇することにより,ステントの変態温度はチューブ材と比較して低下する.(5)加工率が高く,熱処理時間が短いほど血管拡張力の1つの指標とされるラジアルフォースが大きくなる.(6)疲労寿命を損なわずに高拡張力を発揮するステントを作製するには加工率60%,最終熱処理時間5 minの条件が最適である.
以上の理由から「おおむね順調に進展している」と評価した.

今後の研究の推進方策

上述の通り,ステントの表面性状を改善し,さらなる疲労寿命改善に取り組む必要がある.この点については既に計画に盛り込んでおり,今後計画に従って酸洗いや電解研磨等を施す等の改善方法を検討する方針である.
当初計画に含めていなかった実施項目として「FEM解析」と「内圧変動による疲労寿命の評価」がある.FEM解析ではソルバーにMSC. Marcを用いる.局所的な応力やひずみの評価を行い,素材となるTiNi形状記憶合金の力学特性およびステント形状の最適化に役立てる.また,内圧変動による疲労寿命の評価は実使用を想定した試験装置を設計・製作する.本装置はステントを挿入した模擬血管に空気圧を利用して内圧変動を繰返し発生させる仕組みとする.将来は圧力媒体を空気から生理食塩水等の生体代用液に変更し,より体内に近い環境で評価を行う計画である.
これらの項目を新たに計画に採り入れて次年度以降の研究を進める方針である.

次年度使用額が生じた理由

物品費の調達方法見直しに伴い差額が発生した.翌年度分の助成金と合わせて材料費(TiNi形状記憶合金線材の購入)に充てる.

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] 超音波ショットピーニングによる傾斜機能TiNi形状記憶合金の機械的性質改善2023

    • 著者名/発表者名
      松井良介,宮本崇志,濱川悠太,服部兼久
    • 雑誌名

      ばね論文集

      巻: - ページ: -

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Characterization of Polyurethane Shape Memory Polymer and Determination of Shape Fixity and Shape Recovery in Subsequent Thermomechanical Cycles2022

    • 著者名/発表者名
      Staszczak Maria、Nabavian Kalat Mana、Golasinski Karol Marek、Urbanski Leszek、Takeda Kohei、Matsui Ryosuke、Pieczyska Elizibieta Alicja
    • 雑誌名

      Polymers

      巻: 14 ページ: 4775~4775

    • DOI

      10.3390/polym14214775

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] 半径方向単軸圧縮モードにおける高拡張力ステントの有限要素解析2023

    • 著者名/発表者名
      森本楓生, 島村真人, 松井良介, 山内清, 武澤清則, 山本将弘, 喜瀬純男
    • 学会等名
      TOKAI ENGINEERING COMPLEX 2023(TEC23)
  • [学会発表] TiNi形状記憶合金の腐食疲労寿命に対するピーニング加工と機械的研磨の効果2023

    • 著者名/発表者名
      松田樹, 橋本妃環, 山田紘輝, 松井良介, 服部兼久
    • 学会等名
      TOKAI ENGINEERING COMPLEX 2023(TEC23)
  • [学会発表] 機械的研磨と不動態薄膜によるTiNi形状記憶合金の腐食疲労特性改善2023

    • 著者名/発表者名
      橋本妃環, 松田樹, 松井良介
    • 学会等名
      TOKAI ENGINEERING COMPLEX 2023(TEC23)
  • [学会発表] 形状回復温度の傾斜機能特性を有するTiNi形状記憶合金の開発2022

    • 著者名/発表者名
      松井良介, 濱川悠太
    • 学会等名
      2022年度秋季ばね及び復元力応用講演会
  • [学会発表] 超音波ショットピーニングと機械的研磨の組合せによるTiNi形状記憶合金の腐食疲労特性改善2022

    • 著者名/発表者名
      松田樹, 橋本妃環, 山田紘輝, 松井良介, 服部兼久
    • 学会等名
      2022年度秋季ばね及び復元力応用講演会
  • [学会発表] 高拡張力TiNi形状記憶合金ステントの半径方向単軸圧縮モードにおける変形特性2022

    • 著者名/発表者名
      森本楓生, 島村真人, 松井良介, 山内清, 武澤清則, 山本将弘, 喜瀬純男
    • 学会等名
      2022年度秋季ばね及び復元力応用講演会
  • [学会発表] 圧縮残留応力を導入したTiNi形状記憶合金焼結体の機械的特性2022

    • 著者名/発表者名
      山口裕也, 宮本崇志, 松井良介, 服部兼久
    • 学会等名
      日本機械学会材料力学部門M&M2022材料力学カンファレンス
  • [学会発表] 高密度傾斜機能TiNi形状記憶合金焼結体の機械的性質2022

    • 著者名/発表者名
      濱川悠太, 松井良介, 服部兼久
    • 学会等名
      日本機械学会材料力学部門M&M2022材料力学カンファレンス
  • [学会発表] TiNi形状記憶合金ステントの疲労破面形態2022

    • 著者名/発表者名
      島村真人, 松井良介, 山内清, 高村誠一, 武澤清則, 小川明
    • 学会等名
      日本機械学会材料力学部門M&M2022材料力学カンファレンス
  • [学会発表] TiNi形状記憶合金の腐食疲労寿命に及ぼすピーニング加工の効果2022

    • 著者名/発表者名
      松田樹, 松井良介, 服部兼久
    • 学会等名
      日本機械学会材料力学部門M&M2022材料力学カンファレンス
  • [学会発表] 形状記憶合金の基本挙動と高機能化への取り組み2022

    • 著者名/発表者名
      松井良介
    • 学会等名
      形状記憶合金協会第1回Webセミナー2022
    • 招待講演

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公開日: 2023-12-25  

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