研究課題/領域番号 |
22K04775
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
新井 進 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (20313835)
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研究分担者 |
清水 雅裕 信州大学, 学術研究院工学系, 助教 (90780601)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | Ag-Bi合金/CNT複合めっき / 非シアン浴 |
研究実績の概要 |
非シアン系Ag-Bi合金めっき浴の調製および当該めっき浴からのAg-Bi合金めっきについて検討した。AgイオンおよびBiイオンの錯化剤としてそれぞれヨウ化物イオンおよび酒石酸イオンを用いて安定なAg-Bi合金めっき浴(ヨウ化物-酒石酸浴)の調製に成功した。当該めっき浴からのAg-Bi合金析出挙動を電流-電位曲線の測定により解析し、AgがBiに対して優先析出することおよび浴の空気かく拌により無かく拌と比較して限界電流密度が一桁増大することを明らかにした。当該めっき浴から直流法により合金めっきを試みたが析出物は粉末状(デンドライト状)形態となり膜状形態(めっき膜)は得られなかった。電析膜を膜状形態にするためパルス電解を実施した。Agのみの析出が起こる電流密度とAg-Bi合金析出が起こる電流密度を交互に印加することにより緻密な膜状形態のAg-Bi合金析出物(Ag-Bi合金めっき膜)の作製に成功した。作製したAg-Bi合金膜(Bi含有量0.4 mass%)の硬度は102 HVであり目標値である130 HVに達しなかった。そこで膜硬度を向上させるため、めっき浴への添加剤を調査した。その結果、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)の添加により微細な結晶子からなるAg-Bi合金膜が得られ、硬度は130 HVを超えた。さらに熱処理による膜硬度変化を調査した結果、160℃で300時間熱処理しても膜硬度が低下せず、硬度の耐熱性に優れることを実証した。本Ag-Bi合金めっき膜はEVの急速充電用コネクタへの適用を念頭に置いており、最重要特性の一つである膜硬度の耐熱性をクリアできたことは大きな成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
非シアン系Ag-Bi合金めっき浴(ヨウ化物-酒石酸浴)の調製に成功し、当該めっき浴からの合金析出挙動を明らかにした。また、パルスめっきにより緻密なAg-Bi合金めっき膜の作製に成功した。さらに、めっき浴への添加剤を検討し、膜硬度の向上に有効な添加剤を見出すことができた。Ag-Bi合金/CNT複合めっき膜の硬度の目標値は130 HVであったが、CNTの複合化無し(Ag-Bi合金めっき膜)で130 HVを超える硬度を達成できた。加えて膜硬度の耐熱性を評価し、本Ag-Bi合金めっき膜が優れた硬度の耐熱性を有することを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
Ag-Bi合金めっき膜が高い膜硬度および膜硬度の耐熱性を有することを実証できたため、そのメカニズムをEBSD(IPFマッピング等)やTEMを用いて解析する。またAg-Bi合金/CNT複合めっき膜を作製し、その硬度(耐熱性含む)、耐摩耗性、導電性および熱伝導性等を評価する。今回調製に成功したヨウ化物-酒石酸浴は強塩基性浴(pH=12)であるため、非シアン系酸性Ag-Bi合金めっき浴の調製も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、パルス電解装置を新規に購入予定であったが、既存の装置への機能付加により予定していた実験が可能となったため、次年度使用額が生じた。次年度使用額分は、本年度の消耗品等に当てる予定。
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