研究課題/領域番号 |
22K04798
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
酒井 清吾 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (70323110)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 水平旋回型混合機 / 二次流れ / フィレット形状 |
研究実績の概要 |
本研究では,周囲から流れを巻き込み中心部に流出する方式の平面円盤形状の混合槽において,その側面に丸みを持たせた混合機を開発する.温度変化,濃度変化,流動変化が複雑に絡みながら進行する熱・物質拡散流動場の支配要因や混合状態に影響を与える熱流動場の構造を目指す. 先行研究によれば,混合槽内部では周方向に準自由渦を形成し,流れは対数らせんを描きながら流れるものの,その流れは,フィレット形状によりもたらされる戻り流れ(二次流れ)とも相互作用を及ぼし,また,二次流れの発生・成長・衰退は流入条件によって大きく変化しているとされてきた.そのため,まず実験において,混合槽内速度分布の観察を行い,混合槽内の速度分布は中心部に強制渦 ,その外側は上下壁面影響を受け準自由渦が発生し,準ランキンの渦となり,混合槽端部は流入による噴流の影響を受けることがわかった.それらは相互に干渉することで, 混合槽内の速度分布が構成されると考えられる. 数値解析においては,まず,数値拡散の影響を評価した.拡散係数を限りなくゼロに近づけても数値拡散が生じるものの,その影響は入口近傍にとどまり,全体の混合への影響は小さいものと判断できた.続いて,濃度差に起因する密度差が大きい場合と小さい(または差がない)場合の混合を比較した.密度差が小さい場合または差がない場合は,流入する流れによって形成されるそれぞれの界面が安定的に形成され,その界面から拡散係数の数値に従って混合・拡散が広がっていた.密度差が更に大きくなると,濃度差に起因する密度が大きい流体は他方の流体の下に潜り込む傾向が,濃度差に起因する密度が小さい流体は他方の流体の上に浮き上がる傾向があり,それぞれの流れが形成する界面が広がる傾向にある。しかしながら,密度差が更に大きい場合には,この界面の広がりが生じにくく,混合・拡散を良化させる工夫が必要となることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
可視化された流れを 非接触で定性的かつ定量的に同時計測する手法である,粒子画像計測(Particle Image Velocimetry : PIV)を用いて,混合槽内の速度分布を計測し,中心部に強制渦,その外側は上下壁面影響を受け準自由渦が発生し,準ランキンの渦となり,混合槽端部は流入による噴流の影響を受けることなど,これまで未解明であった流れ場の構成を明らかにし,外部発表することができた. また,数値解析ではこれまで,実験に即した低濃度差による低密度差の流体間の混合・拡散現象に着目していたが,高濃度差による高密度差が生じる流体間の混合・拡散現象や、濃度差がなく密度差の全くない場合の流体においては界面が安定的に形成されることを明らかにしたこと,密度差が更に大きくなると混合が促進されなくなり,新たな問題点を洗い出すことができたことは,今後の混合槽内の混合・拡散現象を良化させる上で,界面の重要性を示す大きな成果であるといえる.
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今後の研究の推進方策 |
これまで着目してきた濃度差に起因する密度差の流体間の混合・拡散現象だけでなく,温度差に起因する密度差の流体間の混合・拡散現象に着目していく.濃度場・温度場にはアナロジーが成り立つと考えられるため,数値解析によって,温度差に起因する密度差の流体間の混合・拡散現象の解析を進めていく. また,密度差が界面の広がりに大きな役割を果たす可能性が示されたため,界面の広がりを評価する実験・数値解析が必要となる.2次元の並行流に密度差を持たせ,流れの浮き上がり・潜り込みの様子を定性的・定量的に評価することや,それらに起因する界面の広がり,流入部の再検討を行って,密度差が威嚇的大きな流れの場合でも混合・拡散が進むような実験系を構築することで,混合・拡散現象の良化の関係を明らかにする必要がある.
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ予算の執行ができたが,残額が少額のため消化できず,次年度に繰り越す.額は少額のため,当初予定の次年度使用方針には影響なし.
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