研究課題/領域番号 |
22K04801
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
宮本 学 岐阜大学, 工学部, 准教授 (60538180)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 膜分離 / ゼオライト / silicalite-1 / 浸透気化 |
研究実績の概要 |
純シリカMFI型ゼオライトsilicalite-1膜の迅速合成法の開発を目的に、キャピラリ支持体を用いた伝熱促進型小型管状反応器を用いて、水熱合成時間の大幅な短縮を試みた。 silicalite-1膜合成は二次成長法を用いた。結晶径およそ100nmの種結晶を多孔質α-アルミナキャピラリ支持体にディップコーティングにより担持し、外径6mm、内径4mmのステンレススチール管を合成用反応器として水熱合成を実施した。水熱合成時間30分と非常に短い合成時間であっても、およそ2μmのsilicalite-1膜が得られた。そこで、10wt%エタノール水容液を用いた浸透気化試験により膜性能を評価したところ、分離係数はおおよそ1とほとんど分離性能を示さなかった。水熱合成時間を45分まで延長したところ、分離係数およびFluxはそれぞれ25および0.4 kg/(m2 h)とエタノール選択性を示す膜の合成に成功した。次に、90wt%n-ブタノール水溶液を用いて浸透気化試験を実施したところ、水/ブタノール分離係数およびFluxはそれぞれ408および0.02 kg/(m2 h)と水選択性かつ非常に低い水透過性を示したことから、得られた膜は疎水的でありかつ結晶粒界等の欠陥の少ない膜であることがわかった。 膜性能のさらなる向上を目的に、種結晶塗布後に焼成を実施し合成した膜は、エタノール/水浸透気化試験において、分離係数および透過速度はそれぞれ40および0.6 kg/(m2 h)を示し、膜性能が向上した。これは種結晶塗布後の焼成により、支持体からの種結晶の剥離が起きにくくなったことが原因と考えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通り、微小な種結晶の支持体上への均一な塗布および小型反応器を用いた水熱合成中の伝熱促進により、従来1日程度必要であったsilicalite-1膜の水熱合成時間の大幅な短縮(45分)に成功している。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画で提示したゼオライト膜の迅速合成のコンセプトを実証できたため、次年度は①種結晶担持状態の最適化によるsilicalite-1膜合成時間のさらなる短縮化および②他のゼオライト膜合成への展開を進める。 ①初年度の研究成果において、種結晶層の緻密化が重要であることが示唆されたため、より微小な種結晶や異なる結晶径の種結晶を組み合わせることにより種結晶層の緻密化し、silicalite-1膜の合成時間をさらに短縮する。 ②ゼオライト膜の迅速合成法の基本コンセプトはsilicalite-1膜合成において実証できたため、本手法が他のゼオライト膜合成にも応用可能であることを実証する。
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