研究課題/領域番号 |
22K04803
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
三野 泰志 岡山大学, 自然科学学域, 助教 (70709922)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 油水分離 / コアレッサー / 数値シミュレーション / 混相流 / 格子ボルツマン法 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、水中に分散した油滴(O/Wエマルション)をフィルターにより効率的に分離する技術の一つである「コアレッサー」を理論的に設計するための指針を確立することである。O/Wエマルションが多孔体を透過する様子を数値シミュレーションと直接観察実験によって調査し、油滴の合一挙動に影響を及ぼす因子を明らかにすることを目指して、令和4年度は以下の成果を得た。 (1)シミュレーションモデルの開発:界面活性剤を含む油-水二相流体を表現するための流体シミュレーション技術を、自由エネルギー型二相系格子ボルツマン法をベースとして開発した。既往の計算結果と比較することによって、開発モデルの妥当性を確認することができた。さらに、複雑な形状の固-液界面を含む系内の流動を効率よく計算できるSmoothed Profile法をベースに、二相流体の多孔体透過シミュレーション技術を開発した。 (2)液滴透過実験の準備:開発したシミュレーションモデルの妥当性を評価するために、粒子充填層内の液滴透過実験を行う予定である。本年度は、直接観察用セル及び液滴供給部を含む実験装置一式の作製を行った。観察用セルにはガラスビーズを中央に充填した擬2次元セルを採用し、着色した油滴が透過する様子を顕微鏡により観察した。計算結果との比較のためには液滴の透過挙動をより詳細に観察する必要があると分かったため、現在装置の改良に取り組んでいるところである。そのため、ハイスピードカメラを用いた観察及びシミュレーション結果との比較は次年度に行うこととした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
数値シミュレーションモデルの開発については、界面活性剤を含む油-水二相流れを表現するための流体シミュレーション技術、及び二相流体の多孔体透過シミュレーション技術の開発が完了しており、計画よりも進展している。一方、実験については、直接観察用セル及び液滴供給部を含む実験装置一式の作製を行ったが、液滴の透過挙動をより詳細に観察する必要性が生じたため、現在も装置の改良を続けている状況にある。以上のように、シミュレーションと実験で研究の進度に少し差が生じたが,総合的に評価して「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)シミュレーション:令和4年度に開発した、界面活性剤を含む油-水二相流体を表現するための流体シミュレーション技術、及び二相流体の多孔体透過シミュレーション技術を組み合わせて、O/Wエマルションの多孔体透過シミュレーション技術を開発する。 (2)実験:直接観察用セル及び液滴供給部を含む実験装置一式を作製する。初年度の遅れを早く取り戻すためにも、令和5年度前半は重点的に実験装置の開発を進めて行く予定である。 シミュレーション技術の開発、さらに妥当性の検証が完了した後は、界面活性剤を含むO/Wエマルションの多孔体透過シミュレーションを行う。油滴サイズや界面張力、粘度といった処理対象液の物性、界面活性剤の種類、多孔体のぬれ性や細孔径、操作条件などの中から重要な因子を特定し、それらと形成される油滴サイズ(分離効率)との定量的な関係を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
開発したシミュレーションモデルの妥当性を評価するために粒子充填層内の液滴透過実験を実施する予定であったが、ガラスビーズ充填層を配置した観察用擬2次元セルの作製に時間を要した。現在、油滴(あるいは油滴群)の透過挙動を観察するために装置に改良を加えているところであり、購入予定であったハイスピードカメラのスペックが確定しなかったため、購入を次年度へ持ち越すことにした。
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