研究実績の概要 |
本研究は、水環境中の有害重金属であるヒ素、およびセレンを分離対象物質とし、鉄系の粉末吸着剤ゲータイト(FeOOH)を担持した混合マトリックス膜によるヒ素とセレンの分離除去を行うことを目的としている。令和5年度はゲータイトを混合マトリックス膜に保持した高機能性膜分離材料を用いたヒ素およびセレンの同時分離除去について研究を行った。 デットエンド型セルを用いて圧力の影響を検討した結果、操作圧力の増加に伴って透過流束が増加し、阻止率が減少した。また、調製した高機能性膜分離材料は低圧条件下において優れた分離性能を有することが明らかになった。pHの影響を検討した結果、ヒ素・セレン共に酸性条件下で膜による高効率の分離が可能であった。中性領域(pH = 6 - 8)でのヒ素とセレンの分離性能はAs(V) ≧ As(III) > Se(IV) >> Se(VI)の順であった。これは、ヒ素とセレンの溶存化学種が大きく影響していると考えられる。 クロスフロー型セルを用いたヒ素・セレン単独溶液での透過実験の結果より、中性領域のAs(III), As(V), Se(IV)に対して90%以上の阻止率を達成した。一方で、Se(VI)の阻止率は50%程度であった。Se(VI)の阻止率はpHを1.5程度にすることで向上した。ヒ素・セレン混合溶液での透過実験の結果より、As(III)を含む混合溶液では、酸性領域においてAs(III), Se(IV)の両方で高い阻止率が得られた。As(V)を含む混合溶液では、酸性領域においてAs(V)/Se(IV)の同時除去が可能であり、As(V)/Se(VI)では短時間ではあるが同時除去が可能であることが明らかとなった。
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