研究課題/領域番号 |
22K04814
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
石飛 宏和 群馬大学, 大学院理工学府, 助教 (00708406)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | レドックスフロー電池 / 反応工学 / カーボン多孔電極 / 連通孔 / 物質輸送 / 液透過性 / バインダー材 |
研究実績の概要 |
バナジウムレドックスフロー電池(VRFB)は,活物質としてバナジウム錯体を使う送液型の蓄電池である.近年の国内外の研究活動により,電極活性は向上したものの,活物質の比較的に低い拡散係数や電解液の比較的に高い粘度により,物質輸送に由来する電圧損失や圧力損失によってシステムのエネルギー効率が低下する課題があった. 本研究では活物質の輸送促進や液透過性の向上を目的として,深さ方向・面内方向ともに同一・均一な連通孔構造を有し,バインダー材の無いシームレスカーボン材料について電気化学測定を行った.連通孔径を13 μm~47 μmとした材料を作製し,限界電流密度(活物質輸送の速度により支配されている電流密度)を評価した.その結果,連通孔径が小さいほど限界電流密度は高くなる傾向が明らかになった.この結果は連通孔径が小さくなるほど境膜(物質輸送が起きるほぼ流動していないと仮定できる薄層)面積が大きくなるためだと考えられる.これらの結果を無次元化してレイノルズ数とシャーウッド数の関係をプロットしたところ,連通孔径に関わらずシームレスカーボン構造であれば同じ直線にデータがプロットされることが明らかになった.以上より,連通孔径を小さくすると境膜物質輸送の観点では有利であると言える.一方で,圧力損失の観点では不利であり,単一の連通孔径構造では物質輸送と圧力損失がトレードオフの関係になる.また,シームレスカーボンはカーボンペーパーとは異なりバインダー材が使われていないため,充放電サイクルにおいて劣化が比較的に少ない点も明らかになった.上記の研究活動は注目を集めており,2022年度は4件の招待・依頼講演を行った.加えて,1件の論文発表,1件の国際会議発表,5件の国内学会発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当年度はシームレスカーボン材料の準備を行った上で,複数の連通孔径について電気化学測定・圧力損失測定・耐久性の評価を行うことができた.これらの結果を整理・検討し,2023年度以降の複合電極の研究に反映していく.また,対照材料であるカーボンペーパーについても物質輸送解析や圧力損失の評価を行った.電解液の粘度についても一部についてデータを取得しており,論文発表・学会発表も行い,当初予定していた研究を実施することができた.以上より,当初の目的に従って計画を遂行することができたため,本研究は「おおむね順調に進展している」と判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は物質輸送速度と液透過性を両立できる複合電極について焦点をあてる.複合電極の物質輸送速度の指標として,対称セルで限界電流密度の測定を行い,ダイヤフラム式圧力計で圧力損失を実測する.また,電解液の粘度の実測を進め,圧力損失と合わせて液透過性の評価を進める.必要に応じて,バナジウム以外の活物質(有機系活物質など)についても試験を行う.長期的には充放電試験を行う予定である.また,研究成果を発表・討論するために学会発表などを行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
繰越額は5千円未満であり,予算は概ね適切に執行したと考えている.繰越金については次年度の消耗品購入に充当する.
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