研究課題/領域番号 |
22K04815
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
伏見 千尋 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50451886)
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研究分担者 |
能村 貴宏 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (50714523)
池上 貴志 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70534460)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 蓄熱発電 / バイオマス発電 / 変動性再生可能エネルギー / 流動層 / 相変化物質(PCM) |
研究実績の概要 |
1. 化学蓄熱粒子(CaO/Ca(OH)2/Alumina)を流動層に用いてバイオマス発電所に統合したモデルについて、発電サイクルがorganic Rankine cycle(ORC, タービン作動温度 約90℃)の場合とsteam Rankine cycle(SRC, タービン作動温度 約420℃)の2つの場合において、熱効率と経済性を試算した。その結果、充電での電気代が0.05 USドル/kWheであれば、化学蓄熱システムのみの蓄電のlevelized cost of storage (LCOS)は0.92~2.4 USドル/kWhe (ORCの場合)、 0.23-0.78 USドル/kWheと試算できた。また、充電での電気代がLCOSに占める割合が半分を超えることも明らかにした。システム全体の熱効率については、反応ガス・流動化ガスに用いる水蒸気の顕熱と潜熱の回収と、タービンの発電効率に大きく依存することが明らかとなった。2.SRCにおいて、類似の系としてsteam accumulatorを蓄熱設備としてバイオマス発電所に統合したシステムのLCOSも試算した。3. ORCについて類似の系として地熱発電に流動層蓄熱部を統合したシステムを構築して、蓄熱発電の経済性を試算した。4.流動層反応器を用いて、モデル粒子としてMgO粒子の水和反応を行った。MgO粒子(粒径350~500 μm)に流動化ガスである窒素と反応物である水蒸気を導入した際の粒子層の温度変化を測定した。粒子層初期温度・入口ガス温度を下げ水蒸気分圧を上げることにより反応率が上昇することを示した。5. 乾式前駆体作製法と酸化熱処理を組み合わせることで、蓄熱密度が500 kJ/L、融点190℃程度、過冷度ほぼゼロのZn-Sn系MEPCMの開発を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2022年度は、当初の予定のうち 1) 約150-200 ℃で高密度・高速で蓄熱できる新規潜熱蓄熱(PCM)粒子を開発、2) 急激な熱変動に対応可能な非定常流動層蓄熱部モデルの構築、3) バイオマス電力システムモデルに組み込んだ際の経済性、についてそれぞれ大きな進展があった。 さらに、3) の2022年度の成果をQ1 journalに論文を出版することができたこと、4) 伏見研究室の大学院生1名が数か月能村研究室にて滞在して実験を行ったため、本件の共同研究を推進することができたこと、5. 類似の系としてsteam accumulatorをバイオマス発電所に統合した場合と、流動層蓄熱部を地熱発電所に統合した際の経済性の試算もすることができたため今後の研究のさらなる広がりが見えたこと。 が理由である。
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今後の研究の推進方策 |
・作製したPCMについて流動層に用いることにより、非定常蓄熱の研究を推進する。 ・流動層の熱制御を2023年度よりもさらに高度にすることにより、より実際の運転に近い状況での流動層蓄熱器の性能評価を行う。 ・2022年度末の成果について、現在執筆している英語論文について出版に向けての作業を迅速に進める。 ・システムの観点で流動層の運転方法の調整と最適化も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度の成果発表のために、2023年5月にエジンバラで開催予定の国際学会の旅費に充当する予定である。
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