研究課題/領域番号 |
22K04819
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研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
小廣 和哉 高知工科大学, 理工学群, 教授 (60170370)
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研究分担者 |
古田 寛 高知工科大学, システム工学群, 教授 (10389207)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 金属酸化物球状多孔体 / ソルボサーマル合成 / CNT球状構造体 / メタマテリアル |
研究実績の概要 |
サブミクロンサイズの球状触媒上に全方向に成長させた長尺で均一な長さの高密度頭髪状カーボンナノチューブ(CNT)構造体(以下、等方性CNT構造体)の合成を試みた。まず、サブミクロンサイズの球状金属酸化物多孔体(TiO2、ZrO2、SnO2、CeO2)に担持したCNT触媒(FeOx、CoOx、NiOx)を一段階ソルボサーマル法および二段階含浸法で調製した。これらの触媒を用い、アセチレンガスを炭素源とする化学熱気相成長法により、等方性 CNT構造体の合成を試みた。その結果、CNT成長触媒と触媒担体の各種組み合わせの中で、とりわけCNT成長触媒にFeOx、担体にZrO2を組合わせた球状多孔体触媒が、温度730 ℃、圧力65 Pa、アセチレンガス流量10 sccm、反応時間10 sの条件で、最も効率よく等方性CNT構造体を生成した。得られた等方性CNT構造体は、電子顕微鏡観察により、直径約500 nm核から全方向に約3μmのCNTが均一に成長した、ウニ状というよりは頭髪状の綿菓子のような構造をしていた。さらに詳細に観察すると、ソルボサーマル触媒を用いたCNT構造体は結晶性が高く、緻密で太く直線的であったが、含浸触媒を用いたCNT構造体はややまばらで細く、カールしていた。これら綿菓子状のCNT構造体が複数個集合することで、ユニークな層構造を構築することも見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請時には、予備的に合成した不揃いのFeOx-ZrO2多孔体を触媒とし、アセチレンによるCVDを行い、約3μmの長さのCNTが生えたCNT/FeOx-ZrO2多孔体が得られていた。しかし、CNT成長の再現性が乏しかった。この一年で、触媒担体としてTiO2、ZrO2、SnO2、CeO2を、CNT触媒としてFeOx、CoOx、NiOxを組み合わせ、一段階ソルボサーマル法および二段階含浸法で候補となる担持CNT 球状触媒の種類を増やした。さらに、触媒濃度、エチレンガス濃度、反応時間、反応温度等を系統的に変化させ、CNT成長の条件を精査した。その結果、触媒にFeOx、担体にZrO2を組み合わせた球状多孔体触媒が、温度730 ℃、圧力65 Pa、エチレンガス流量10 sccm、反応時間10 sの反応条件で、最も効率よく等方性CNT構造体を生成することを見出した。このように、高効率触媒がいち速く得られたため、当初の計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
頭髪状あるは綿菓子状をした非常に興味ある構造をしたCNT構造体が得られているが、現状では一度のCVD反応で1mg以下の量のCNT構造体しか得られていない。そこで、CVD装置を改造するとともに大型化し、一度に得られるCNT構造体の量を増やす予定である。ある程度の量のCNT構造体が得られたなら、得られたCNT構造体の物理的、電気的、特性を調べる。CNT構造体の均一性評価は、走査型電子顕微鏡、FTIRを用いて評価する。重量評価と比表面積計測によりCNT構造体の密度評価を行う。顕微ラマン分光器を用い次元制約的CNT結晶性を評価する。CNT成長方向が等方性であれば、電気伝導、光学特性の空間等方性を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験装置を組み立てるのに必要な機器や部品を購入し、装置の設置や運転条件の最適化に専念したため。
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