研究課題/領域番号 |
22K04829
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
後藤 健彦 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 助教 (10274127)
|
研究分担者 |
定金 正洋 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 教授 (10342792)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 高分子ゲル / ヘテロポリ酸 / 不均一系触媒 |
研究実績の概要 |
本研究は、ヘテロポリ酸(HPA)を固体酸として用いるための固定化担体として、エーテルがヘテロポリ酸の抽出溶媒として利用されていることに着目し、エーテル基を持つ高分子とHPAから成る、HPA/高分子ゲル複合体を作製した。複合体を水または、有機溶媒で洗浄後、HPA含有率の変化、並びに酢酸エチルの分解反応を行い、HPA保持率および触媒活性の高い複合体の合成条件を検討した。HPAは、中心金属を変えることにより、対イオン(プロトン)の数が変わって酸強度も変化すると考えられる。そこで、酸強度の変化がHPAの高分子との相互作用の強度に及ぼす影響を検討するために、Keggin型のリンタングステン酸(H3[PW12O40])とケイタングステン酸(H4[SiW12O40])およびPreyssler型のリンタングステン酸を、メトキシトリエチレングリコールメタクリレートゲルに固定化した複合体を作製し、複合体を水または、有機溶媒で48時間洗浄後、HPA含有率の変化、並びに酢酸エチルの分解反応を行い比較した。 リンタングステン酸とケイタングステン酸では、ケイタングステン酸の方が、プロトン(H+)が多い分、固定化率、あるいは反応速度が向上すると思われたが、固定化率はリンタングステン酸の約40%に対してケイタングステン酸は34%とやや低下した一方で、固定化されたHPA単位重量あたりで比較した反応速度はやや向上した。Preyssler型とKeggin型を比較した場合も同様に、プロトン数の多いPreyssler型の方が、水で48時間洗浄後の触媒保持量は、Keggin型の方が高かったが、固定された単位HPA重量あたりの反応速度は、Preyssler型の方が高かった。 以上より、HPAとエーテル基を持つ高分子との複合体において、HPAのプロトンは固定に使われているよりも。酸触媒に使われたと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は、計画では、HPAの種類がHPAの担持安定性に与える影響の検討および、HPAの種類が触媒安定性に与える影響の検討を行う予定であり、Keggin型のリンタングステン酸(H3[PW12O40])とケイタングステン酸(H4[SiW12O40])およびPreyssler型のリンタングステン酸 (H14[P5W30O110Na])を、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート(TEGMA)ゲルに固定化した複合体を作製し、複合体を水または、有機溶媒で48時間洗浄後、HPA含有率の変化、並びに酢酸エチルの分解反応を行った。HPAは、中心金属を変えることにより、対イオン(プロトン)の数が変わって酸強度も変化するため、酸強度の変化がHPAの高分子との相互作用の強度に及ぼす影響を検討した結果、以下のことが明らかになった。1)ケイタングステン酸の方が、プロトン(H+)が多い分、固定化率、あるいは反応速度が向上すると思われたが、固定化率はやや低下した。2)高分子に固定化されたHPAを単位重量あたりで比較した反応速度はやや向上した。以上よりHPAの種類がHPAの担持安定性および、触媒安定性に与える影響は、HPAとエーテル基を持つ高分子との複合体において、HPAのプロトンは高分子との相互作用により強く固定されておらず、触媒活性が維持されているということを明らかにできたため。
|
今後の研究の推進方策 |
1)HPAの構造・組成が触媒活性安定性に与える影響の検討 HPAの種類を変えた場合の担持量に及ぼす影響を、重水中での、酢酸エチル分解反応を行い、酢酸エチルの残存量や、高分子が分解してできた炭化水素の種類や量をプロトン NMRを用いて分析する。 2)高分子の相互作用を変えた場合の触媒担持安定性に与える影響 これまでに検討した、メタクリル酸系高分子に変えて、親水性の高いアクリル酸系高分子を用いた場合、メチルエーテルに変えて、ヒドロキシエーテルを用いた場合、アクリルアミド系高分子を用いた場合について触媒の担持量、担持安定性に及ぼす影響を、洗浄後の触媒残存率を熱重量分により検討する。また、水以外の溶媒を用いた場合の、高分子、HPA間の水素結合をはじめとする相互作用への影響についても検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
欧州で行われる国際学会への出席を予定していたが、2022年度中にコロナ禍の終息が見通せなかったことと、戦争による国際情勢の不安定化への懸念から、2023年度国際学会への参加申し込みができず、国内で行われた国際学会のみへの参加となったため、外国旅費の使用が無かった。引き続き、海外情勢は不安定だが、国内で行われる学会に積極的に参加することと、学術論文の発表などを通じて情報発信していく予定である。
|